神峰律と辻崎司

「司さん、失礼します」
「…そういうことは、言うな」
「めんどくさい人ですね」
突然したらそれはそれで怒るくせに、と俺は司さんの後頭部を軽く手のひらで寄せる。
「待て、ちょっとまだ心の準備が」
「いつも言ってますよねそれ。必要なんですか?」
司さんが俺の胸元あたりを押して唇同士の距離をとろうとする。
「当たり前だろ」
「そうなんですか。でもこのままじゃ司さん、永遠に心構えが出来なさそうなので今しましょう」
「え、は、」
司さんはまた俺が待つと思っていたのだろうか。残念ながら今は珍しいことに待つ気分になれそうにないのだ。
俺は軽く頭を寄せるなんてせず、ぐいっと司さんの頭を押し、触れるだけのキスをする。
司さんはずっと「嫌だ」「待て」などと言っていたが、「嫌ならやめます」と言ったらそれはそれで困り顔をされた。解せない。
抵抗はなくなったけれど、その代わりどんどん顔が赤くなっていっているのが面白くて、少し口を開けて舌を入れてみた。
「ーー、!!」
なにかもごもごと言おうとしているが、おおよそ抵抗の言葉だろう。
形だけだとしても、わざわざ嫌がる言葉を聞きながらし続けたくはないので口を離した。
「かん、みね…」
「はい、何ですか」
司さんがよりかかってくる。重い。
言ったら怒られるだろうか。まあそのときには女子ですか、とでも言ってやろう。
「…司さん、年齢に対して思いのほか初心ですね」
軽く唇のあたりを指で拭いながら言うと、初めてなの知ってるだろ、と拗ねられてしまった。俺も初めてなんだけれども。
まあそうだろうなと思ってましたと返事をすればまた一層拗ねられてしまいそうだったので、その言葉の代わりに「司さんは本当に面白いですね」と言ったら結局また拗ねられてしまった。