キミはライバル

辻崎シオは女の子である。
常にぼんやりしていて、異性の目なんか気にもとめず自由にうたた寝をする始末だが、年相応に可愛いものは好きだ。
ふわふわのぬいぐるみは抱きしめたいし、淡い色のネイルカラーは大人っぽくて素敵だ。きらきら光るイヤリングやペンダントは背伸びしすぎかなと思うけれど、女の子として憧れる。
そういう、ちょっと大人びた素敵なものが似合う人になりたいな、という淡い憧れに反して、自分のむにむにした顔とぺったんこの胸にはがっかりする。
兄や平坂が選んでくる服はかわいい一辺倒だし、露出度の高い服は兄がぎゃんぎゃん言うから着るに着れない。
というか、露出度の高い服を着ると、どうしてもスレンダーな体型と向き合わなればならないから悲しくなる。
シオは鏡の前で自分の頬を引っ張ったり、押したりしては、ため息をついた。
「なにしてんの、シオちゃん」
ひょいと背後から現れた人物に、シオはムスリと頬を膨らませた。
同じ支部にいる涼宮梓は、数少ない女の子の友達で、どこでも自由に寝るシオの理解者である。
だが、仲良しの彼女もこと一つの話題においては敵なのである。
「ん?ボクの顔になんかついてる?」
人の顔を見るなり、じとーっとした視線を向けてくるシオに、梓は小首を傾げた。
「……梓、ずるい」
涼宮梓はナイスバディなのである。
とってもスタイルがいいのである。
女の子らしい体型に、サラサラの髪に、ぱっちりとした瞳。シオからすればそれは自分にはないもので、羨ましい限りで、つまりは敵なのである。
「えっ、ズルいって……なんかした?」
「……むぅ、秘密」
「なんだよ、気になるじゃん」
敵なのでこちらの弱点は教えてやらない。
背後で梓が「なになに?」と追いすがってくるが、シオは聞こえないフリである。
もうちょっと大人になったら、きっとシオちゃんも女の子っぽくなるよ!と宇佐美はいつも声をかけてくれるが、梓とシオは一歳しか違わないのだ。
それなのにこんなに格差があるなんて理不尽だとしか思えない。
あんまりにも梓が追いかけてくるので、シオはくるりと梓の方へ向き直って、敵意マシマシの目で彼女を見る。
「梓には負けない……」
「……??えーっと、何の事か全然分かんないけど、ボクも負けないよ?」
どうにも噛み合わない女子二人に、遊真と迅が顔を見合わせてヒソヒソ話をしていたが、それはまた別の話である。