48 -立海大附属-
立海大附属と氷帝学園。
お前は俺達を繋ぐ、架け橋だ――
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バイバイ…ってことは、自殺か…?
いや、待て…そんな…。
【お掛けになった電話は、現在電源が入っていないか、電波が…】
「クソッ…!」
何があったんだ…彩愛…。
立海に、行ってみるしかねぇか…――。
「ちょっと出掛ける。部のことは任せた」
近くに居た宍戸に声を掛けた。
『出掛けるって…何処に行くんだよ?』
「立海だ」
『立海!?まさか乗り込みに行く気じゃねぇだろうな!?』
「そんなことしねぇよ。ちょっといとこがな」
『いとこ?』
昔は立海に乗り込んだ記憶もあるが、あの時から少しは成長した。
もう無茶出来る歳でも無くなったってことだろうがな…。
『跡部さん、もう大会も近いんです。それを考えて行動してください』
「お前に言われなくても分かってる、鳳」
一丁前に俺に説教か…。
生意気になりやがって、まったく。
「アイツらにも活を入れてやらねーとな」
何やってんだ、馬鹿野郎。
お前達は…ライバルだろーがよ。
「俺だ。ヘリを用意してくれ」
ヘリなんざ使わなくとも、神奈川ならすぐに行けるだろうが…急いで損はない。
彩愛の命に関わることかもしれねぇからな。
『
跡部!?』
「丸井か…ジローがこの前の試合、絶賛してたぜ」
『おぉ!最高だっただろぃ☆』
って、そんな世間話をしに来たんじゃねぇ…。
お前も星マーク付けて話してる場合じゃねぇだろ。
「彩愛に何があった?」
『…え?彩愛?なんでお前が…』
しまった、アイツは隠してたんだったな…。
めんどくせぇ…もうそろそろ良いだろ、6年も付き合った仲なんだろ?
「アイツはいとこなんだよ」
『いっ…!』
「リアクションは後だ。彩愛に何があった?」
『…話すと、長くなるんだけどよ…今言えることは、とにかくアイツは…売られるらしい』
「売られる、だと…?」
だから、さよならってか。
しかし何故アイツが…。
待てよ、牧原…そうか、だから柳は…。
「牧原は何処だ?」
『お前…何処まで知ってんだよ…』
「だから、リアクションは後だっつってんだろ」
『俺達で確保したぜ。こっちだ』
確保…ってことは、牧原が彩愛を売ろうとしてたってのは確実だな。
後はアイツに彩愛の居場所を…。
『おーい、跡部が来たぜ』
『跡部!?』
『跡…部…?』
テニス部の部室に入ってみれば、パイプ椅子に座らされてる牧原…の娘か。
そうだ、確かこんな顔だったな。
「久しぶりだな、真田…」
『跡部…何故お前が此処に…』
「お前らに活入れに来たんだよ。ったく、何やってんだ。大会は待っちゃくれねーぜ?」
『………』
どうやら言い返せねぇようだ。
あの傲慢な王者立海が。
ここまで黙られたら気味が悪りぃ気もする。
『柳と幸村には会えたのかよ?』
「…アァン?何の話だ、ジャッカル」
『柳と幸村が…お前に会いに氷帝に行ったが…』
「…何だと?」
んな話は聞いてねぇぜ。
しかし俺に会いに来るってことは、何か重大なことかもしれねぇな…。
『
遅れてすんません!英語の再試がぁ…』
「切原…」
『跡部さん!?』
相変わらず英語が苦手なようだな…コイツ…。
もうアメリカ行ってこい。
「やれやれ、そろそろ帰るか。…コイツにお礼を言ってな」
『……ッ…』
「どうやらお前んとこの噂は本当だったみてぇだな」
『跡部…さん』
コイツとは随分昔に関わりを切った。
さすがは俺の親、正確な判断だったようだ。
「いとこが世話になったな」
『…い…いと、こ…ですって…』
「あぁ、そうだ。彩愛は俺の可愛い可愛い、いとこだ」
『えぇ!?マジッスかそれ!?』
本当に言ってねぇようだな、彩愛の奴は。
コイツらにも言ってねぇことを、俺がバラして良いのかは分からねぇが…。
ま、俺は“お前のいとこが俺”とは言っていない。
“俺のいとこがお前”ってだけだ、俺は自分の話しかしてねぇ。
『
遅れてごめんなさい!英語の再テストが…』
何だこの切原二号は…見たこともねぇ顔だが…。
新しいマネージャーか?
『白井、氷帝の部長だ。挨拶をしておけ』
『えっ…氷帝の部長さん!?あ、あのっ…私、最近マネージャーになった白井梨華です!』
「…跡部だ。彩愛を宜しく頼むぜ」
『彩愛ちゃん…?え…どうゆう関係?』
『白井、後から説明する。とにかく、跡部…これを持って行け』
真田から何やら手渡される。
なんだ…これは…レコーダー?
声を録音する機械のようだが…。
『内容はゆっくりと聞くが良い』
「ありがとよ。慌ただしいが、東京へ帰るぜ。邪魔したな」
そうしてまた、俺は行きと同じ風景を見つめながら、県境を跨いだ。