ルシアと三日月が連れていかれたのは、客室の一室だった。促され中に入ると、草薙よりも少し歳上の男性が座っていた。
「玉城さん、お連れしました」
「ああ、ご苦労様。あ、どうぞお座り下さい」
『ああ』
「、、、、ふむ」
男性、玉城に勧められ、向かいのソファに座る二人。それを見届けると、草薙も玉城の隣に座る。暫しの沈黙、、、それを破ったのは玉城だった。
「お初にお目に掛かります。私は草薙の上司の玉城と申します。無事、審神者におなりなったようですね。まずはおめでとうございます。さて、草薙から聞いていると思いますが、早速本題をお話させていただきます」
玉城はそう言うと資料をテーブルに置いた。
ルシアは黙って資料を手に取ると読み始める。三日月も気になるのか、軽く覗きこむ。そこにはとある本丸の状況が事細かに書かれていた。読み続けているルシアに玉城が静かに話始めた。
「その本丸は最初は普通の本丸でした。しかし三年前、ある出来事が起きてからブラック本丸になり始めました」
『ある出来事とは?』
「、、、、乗っ取りか」
『乗っ取り?』
三日月の呟きに玉城と草薙が反応する。それを見てルシアは資料をテーブルに戻すと、真っ直ぐに二人を見た。
『、、、それで、その本丸を私にどうにかしてほしい、、、と』
「、、、はい。その通りです」
『審神者になってほしいと言うのは、、、そのブラック本丸に行かせる為なんだな?』
「はい、すみませんでした」
『、、、そうか』
うつ向き考え込むルシア。まあ正直な話、そんな予感はしたのは確かだし覚悟はしていた。しかも三日月を顕現している以上、彼も巻き込む事になる。
自分一人の決断で決められる事ではない。どうしたものかと悩んでいると、隣から静かな怒気を含んだ声が聞こえた。
「、、政府とやらは、相も変わらず身勝手だなぁ。自分らの後始末に俺の主を利用するとは、、、、」
『三日月、、、』
「お主達の事、その本丸の審神者を始末させようとしておるのだろう?」
「そ、それは、、、」
「全く、、、これだから人間は、、、」
『三日月、もういい。気持ちは有り難いがそのくらいにしておけ』
「ふむ。あいわかった。主に言われたら止めるしかあるまいな、すまなんだ」
『いや、ありがとう三日月』
自分の為に毒を吐き始める三日月に、申し訳なく思い制止すると、玉城と草薙に向き直る。
『話は分かった。だが受けるかどうかはそちらの答え次第だ』
「はい、なんでもお答えします」
『うむ、では、、、、』
ルシアの質問はこうだった。
1.自分の仕事内容
2.ブラック本丸の主の所業
3.最終的な解決法の希望
「審神者様には、見習いとしてその本丸に出向いていただき、まずは、主の監視をしていただきたいのです」
『主の監視?』
「はい、この本丸の主は禁忌である呪具を隠し持っており、それで刀剣達を操っております」
『操られていると言うことは、彼らの本意ではないと言うことだな』
「はい。一部の刀剣は逆らい、何振りも折られています」
『大体でいい。数は?』
「はい。今のところ確認が取れているのが、短刀が7振り、打刀が8振り、脇差しが4振り、太刀が4振り、大太刀は4振り、槍と薙刀は3振りですが、最近実装した刀剣もありますので、まだまだあるかもしれません」
『多いな、、、となると残っている刀剣はかなり少ないようだな』
「はい。それで、最終的な解決法についてですが、その審神者の追放をお願いします」
『応じなかった場合は?』
「、、、正直、あの審神者が素直に応ずるとは思えません。最終的な決断は貴女様に委ねます」
『、、、、それが死であってもか?』
「!?主、、、」
「え、、、?」
思いがけないルシアの言葉に固まる玉城達。そんな三人を見回しながら言葉を紡ぐ。
『私は、、、元処刑人だ。星の数ほど罪人を断罪してきた』
「はい、、、」
『その私に始末を頼むんだ、、、分かるな?』
「はい。お任せいたします」
「え、、、玉城さん?」
「元々、完全にブラックになったら、あの審神者は逮捕され絞首刑だ。それが少し早まるだけで結果は同じだ」
『なら、契約成立、、、だな』
「はい」
玉城が頷き、追うようにそれに草薙も習う。三日月も最初は面食らっていたものの、次第に笑みを溢し主である彼女を見つめる。
『ただな、、、ひとつだけ約束してほしい』
「はい、なんでしょうか」
どんな条件を提示されるのかと、ビクビクしている二人にただ一言、
『嘘はつかないでほしい』
「え、、、?それだけですか?」
『ああ、それだけだ。それ以外は何も望まない』
「承知いたしました。確実な情報を逐一ご報告することをお約束いたします」
『ありがとう』
「私も、審神者様の従者としてお役目を果たします」
『こんのすけ、頼りにしている。よろしくな』
「主よ、このじじいも主の為に久し振りに踏ん張るとしよう」
『三日月。ありがとう。なら私も久し振りに気張るとしするか』
「どうかよろしくお願いいたします。ですが、もう時間が遅いですし、色々お疲れでしょうし、今夜はこちらの管理している旅館にお泊まりになってください。明日、朝10時にお迎えに上がります」
『分かった。世話になる』
「私は審神者様がお呼びになればいつでも参りますので、何かありましたらいつでもお呼びください」
『こんのすけ。ああ、わかった』
「では、ご案内します」
草薙に続き、ルシアと三日月が部屋から出ると、玉城はふぅと息を付いた。
元処刑人、、、。確かに姿や名前からして日本人ではないことは分かってはいたが、詳しい素性までは調べていなかった。
「ルシア=ランドルフ=ヴェンバッハ、、、か。少し調べてみようか、、、」
玉城はそう呟くと、端末を起動させた。
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