12(流血表現あり)

―――――――――――――
――――――――

その頃、広間には十数振りの刀剣男士に囲まれた長谷部の姿があった。そして上座にはニコニコした霞と一期、その隣には三日月が座っていた。

「さあ!楽しい楽しい処刑タイムよぉ!!長谷部ぇ?言い残すことは?それくらい聞いてあ・げ・る!」
「、、、、別にない。さっさとやれ」
「っ!!相変わらず生意気ね!!まあ?あんたなんて嫌ってほど鍛刀できるし?うざいくらいドロップするし?別に、、、」
「だから早くやれと言っているだろう?貴様の能書きなど冥土の土産にしたくない」
「なっ、、、、!?っく、鶴丸!!早く、早く折りなさい!!」

必死で命乞いするかとタカをくくっていた霞は冷たくあしらわれ、イラつきながら鶴丸に命令した。

「、、、、」
「ちょっと!鶴丸?あんた主の言うことが聞けないの!?」
「鶴丸、、、」

うつむいたまま動かない鶴丸に焦れたのか、ヒステリーを起こす霞。
するとやはり案の定、霞は言霊を使った。

「鶴丸国永、へし切長谷部を折れ!!」
「くっ、、、、い、嫌、、だ」

どんなに抵抗しようにも体は勝手に動く。抜刀し、長谷部に振りかぶる。その光景を見ている霞は醜悪な笑顔を浮かべていた。三日月はさすがにヤバいと思ったのか、本体に手を掛ける。

「長谷部っ、、、すまんっ、、、」

涙を流しながら一気に振り下ろした。


、、、、が、その刃は長谷部には届かなかった。


『これは、、、なんの騒ぎだ』
「主!!」
「なっ!?」
「み、見習い、、」
「審神者様!!」
「あ、あ、、、、」

振り下ろされた白銀の刃は、ルシアの肩に食い込んでいた。吹き出す真っ赤な血が、目の前にいた鶴丸と背後にいた長谷部に飛び散った。
血塗れのルシアを見た鶴丸は真っ青な顔でカタカタ震えだす。駆け寄ろうとする三日月を制すると、ルシアは優しく鶴丸の手を握った。びくりと反応する彼に自分の霊気を流し込む。次第に元の美しい姿に戻っていく鶴丸に、ルシアは静かに話し掛ける。

『大丈夫、大丈夫だ。もう彼女は、お前を縛ることは出来ない、、、さて、お前はどうしたい?』
「お、俺は、、、もう嫌だ、、、俺は、、、」
「鶴丸っ!!言うこと聞けよ!!その見習いも一緒に切り捨てなさいっ!』

鶴丸の背後から霞が言霊を使い続ける。ルシアは血が付いていない左手で震えている鶴丸を抱き寄せる。

『耳を貸すな、、、。もう嫌なんだな?』
「ああ、、もう、誰も斬りたくない、、、仲間を、、、折りたくないっ!!」
『そうか、、、では、私にどうしてほしい?』
「っ、、、けて、、、」
「鶴丸っ!?主を裏切るの!?」

再び横槍を入れる霞。しかしその時、

「助けてくれ、、、!!」
『、、、そうか、それを聞ければ十分だ』

鶴丸の悲痛に満ちた声が響き渡る。泣き崩れる彼をルシアは抱き止め、あやすように背中を擦る。すると、遅れて髭切と膝丸がやってきた。

「おや?血のにおいがするね、、、!主!?」
「一体何があったのだ!」
『髭切、膝丸、、、私は大丈夫だ』

突然乱入してきた源氏兄弟に霞が反応した。

「髭切と膝丸じゃなあい!!貴方達の主は私よ!さ、こちらに来なさい」
「へ?」
「は?」

自分達を呼ぶ霞に、なに言ってるんだと言いたげに
目を見開く二振り、、だったが、すっと空気が凍った。

「なに言ってるんだい?」
「戯れ言を、、、」
「ひ、、、っ!?」

視線で殺せるのではと思うほどの鋭い視線に、霞は小さく悲鳴を上げ、一期の後ろに隠れる。

「僕達はそこの彼女に顕現されたんだよ?だから彼女が僕達の主だよ」
「兄者の言う通りだ。何があっても貴様の物にはならん」
「なっ、、、、あんた、またっ、、、!?」

源氏兄弟の言葉に何かを思い出したのか、ルシアをキッと睨み付ける。

「また勝手に顕現しやがって!!ふんっ!!この要求は失敗ね!!残念ねぇ、三日月様は頂くわねっ!」
『、、、はあ、、』
「三日月様ぁ?やったぁ!!あの泥棒女、諦めるって!!早速今夜、、、」
「主殿」

全く懲りていないのか、はしゃぎ、三日月にまとわり付く霞に、一期が静かに制止する。
途端に霞はじろりと彼を睨む。

「あ?なに?あんたには関係ないでしょ!これからは三日月様が私のあ、い、と、う!!邪魔しないで、、、」
「、、、主殿、見習い殿になんと言いましたか?」
「えぇ、忘れたわよそんなのっ。さ、三日月様!私の部屋に行きましょ!!」

一期を適当にあしらい、三日月の腕にしがみつきながら部屋に連れていこうとする霞に、今まで黙っていた長谷部が口を開いた。

「誤魔化すのか、卑怯者が」
「ああ?んだよ、死に損ないの癖に、、、まじウゼェ、、、」
「、、、」
「消えろよ、カスっ!」
『おい、、、いい加減にしろ、、、、』

長谷部に悪態を付く霞に、ルシアの我慢ももう限界だった。低く、怒りに満ちた声に霞や周りの刀剣達はびくりと肩を震わせる。

『さっきから聞いていれば、、、私の事はいくらけなしても構わない、だが、今までお前の遊戯に付き合ってくれていた彼らにその言い様、、、』
「は?何よ何よ何よ!!見習いの分際でえっらそうにっ!!」

自らの反り血に染まった顔で、ルシアは鋭く霞を睨み付ける。

『お前に主を名乗る資格はない』

キッパリと言い放つ。そして、

『三日月は返してもらう』
「は?だってぇ、あんた要求満たしてないじゃん。あんたの負けよ負け!!日本語分かるぅ?」
「その台詞そっくりそのまま返してやろう」
「ああ?何よ長谷部!!」

長谷部はふぅと息を付くと、藤色の瞳を細め霞を見る。

「貴様は『髭切と膝丸を検非違使を倒して連れてこい』と言った」
「だから何よ」
「『顕現するな』、『自分に渡せ』とは言ってない」
「っ!?」
「要求は満たしている。よって見習いの勝ちだ」
「そ、そんなの、、、こじつけよ!」

長谷部に正論を言われ、挙動不審になりはじめる霞。しかし、三日月から手を離そうとはせず、へばりついたままだったが、三日月がついに動いた。
怖いくらいの無表情でパシッと霞の手を払いのけたのだ。

「え、、、三日月、、、様?」
「、、、、醜いな、、、触るな」
「は、、、え、、、?」
『三日月、、、』
「主、今戻るぞ」

霞に冷たく言い放ち、ルシアを視界に収めニコニコと歩み寄り、そして彼女を労るように抱き締める。

『三日月、、、喧嘩を売るな、、、』
「ん?はっはっはっは。よきかなよきかな」
『いや、全く良くない、、、』
「やれやれ、、、見せつけてくれるね」
「まったく、、、」

見た感じはほのぼのしているが、四振りの殺気は消えていない。これ以上ここにいれば、今以上に凄惨な現場に成り果てるだろうと考えたルシアは、源氏兄弟を見る。

『髭切と膝丸、長谷部と鶴丸を私の部屋に連れて行ってくれ』
「え、、、主は?」
『私は大丈夫だ、、、鶴丸がだんだん辛そうになってきたからな』
「ああ、そうだな、、、分かった」

さ、行こう?立てる?と二振りに支えられながら鶴丸が広間から出ていき、長谷部も一度心配そうにルシアを見ると、なにも言わず広間を出ていった。
鶴丸達が居なくなり、ルシアと三日月のみになったとたん、霞がまたヒステリーを起こし始めた。

「ち、ちょっとぉ!!鶴丸までとらないでよぉ!!」
『これ以上、鶴丸をお前の側には置いておけない。長谷部も同様だ。お前の事だ、また同じことを繰り返すだろうしな、、、』
「くっ、、、」
『そんな事を続けていれば、、、いずれ自分に何倍、何十倍にもなって返ってくる。そのときになってから悟っても手遅れになるぞ』
「っ、、、、!」
「主、行こう?怪我の手当てをしなくてはならんしな」

大量出血の為、ふらつきながらルシアが話していると、三日月が優しく広間を出ようと促す。そんな彼にこくりと頷くと、ヨロヨロと歩き始めた。

「審神者様!!だ、大丈夫ですか!?」
『ああ、心配してくれてありがとう、こんのすけ、、、っく』
「さ、審神者様!」
「よっ、、、と」

貧血でよろけ、倒れかけたルシアを見て慌てるこんのすけを他所に三日月が彼女を横抱きにした。

『三日月、、、汚れる、、、』
「ん?ははは、気にするな。主の血はとても綺麗だぞ?」
『、、、、それ、喜べばいいのか?』
「ふむ、いいのではないか?」
『そうか、、、あ、ありがとう、、、』

そんなやり取りをしながら、広間を後にしようとしたその時、

「ちょっと待ちなさいよ!!逃げるな!三日月様を返せ!!」

全く懲りない霞がわめき散らすと、三日月が振り返らないまま言い放った。

「返せ、、、か。いつから俺はお主のものになったのやら、、」
「え、、、」
「よいか?お主は勝負に負けたのだ。それにお主の醜い本性を垣間見てもなお、愛せなど、、、失笑だな」
「な、、三日月様、、、」
「俺の主は彼女ただ一人。代わりなど誰にも務まらん」

三日月の言葉に絶句する霞に彼は止めを刺した。

「仮にお主の物になる結果になろうものなら、、、俺は迷わず自らを折る」

悔しげに唇を噛み、醜く顔を歪める霞を横目で一瞥すると、こんのすけと共に広間を後にした。


―――――――――――
――――――

『三日月、、、、中々キツい事言うな、、、』
「そうか?主も大概だと思うぞ?」
『ふふ、、、そうだな、、、』
「主、、、?」
『、、、、、』
「そうか、そうだな、、、疲れたな、、ゆっくり休むと良い」
「三日月様?」
「ああ、眠ってしまった、、、俺の提案のせいでかなり苦労させてしまった、、、」
「三日月様、あまり気に病まぬよう、、、審神者様がますます心配されます」
「うむ、、、主が目を覚ましたら謝るとしよう」



- 26 -
前の話目次次の話
HOME

コメント 0件

コメントを書く
夢の住処