Story





※沖田♀、社会人×JKパロ注意





『どうもこんばんは』

『こちらの世界は初めて?』

『まずは貴方のお名前を教えてください』






傷つけてあげる






「………………。」

目の前に出ているコマンドに、沖田はパチクリ。
だが今は真っ暗な世界にそのコマンドしかないため、沖田は少しだけ真剣に向き合う。
そして恋愛ゲームとかやり過ぎたのかと考えながらも、沖田は適当に「ドS」と名乗った。
が、英文字はダメだと拒否されたので仕方なく「総悟」と正直に名乗った。




「で、ここは?」

辺りをキョロキョロと見ると、次第にカラフルな背景となっていった。
これに城とかメリーゴーランドがあれば映えそうと思える感じのパステルカラーの世界。
って思ってたら、奥の方に城やら遊園地らしき影が見えた。
いつから俺は魔法使いになったのかとぼんやりしつつ、今度は自分の身なりを確認する。

自身は制服。
いつもの学校に行く服なのだが、背景が違いすぎて脳内がパニックになっている。
とても俺の趣味ではない。
そんな時、またコマンドが現れた。




『ここは貴方の理想の場所』

『貴方の心を守るための場所』

『ここに来たということは、現実で何か困り事でもあったかしら?』




(……ふーむ、)

困りごと、かぁ。




「そんな事があったような…無かったような、」

説明を受けた沖田は、ふむふむと現状を考える。
これは一種の夢で、現実の世界に疲れた俺がたどり着いてしまった場所。
この夢は、俺に付き合ってくれているだけ。
なら好きなようにやれば良いかと、最終的に開き直った。

そして困り事の件については。
正直、覚えてない。
そもそもそれを思い出したら夢から覚める、というのがオチだろう。
であれば、今はまだ良い。




「俺はここで休んでも良いんですかい?」

沖田はその場に座り、コマンドの返事を待つ。
すると隣に何かの気配。
ふと顔を上げれば、よく知った顔があった。




「…休むどころかストレスなんですが。」

『そう?
貴方の夢によく出てくるから良いかなと思ったのだけど。』

「良くねーし。
つか喋り方や声も合わせてください。
その顔で丁寧語は気持ち悪いんで。 」

『あら残念。』

クスクスと笑ったその人は一回咳払いをすると、聞きなれた声で「総悟」と呼んだ。
そして頭を撫で、肩を寄せてきた。




(うわぁ…)

見た目土方だけど土方じゃない。
何この爽やかなイケメン。
タバコ臭くもないし、マヨネーズもない。
健全な土方じゃん。




『どうだ?
こんな感じで良いか?』

「……ん。」

『そうか。』

頭を撫でられ、耳元で囁かれ、更には頬に唇を落としてきた。
不健全、もとい現実の土方であれば滅多にしない事。
いや、健全すぎる故に下手に手を出さないようにしている。
俺だって学生だけど18になった。
もう大人の仲間入りを果たしているのに、土方はまだ躊躇う。
この制服を脱げば良いのかと思い、大人っぽい格好で会っても特に変わらず。
いつものようにキスだけして終わった…というのもチラホラ。

俺の何が足りないんだろうと、純粋に土方不足になっていた事は思い出した。
でもそれだけで夢に逃げ込むなんてありえない。
なら現実の自分は、どこまで深く傷付いたんだと思う。
ていうかそれだと思い出したくない。
だって今は、




「ン……。」

目線が合えば、自然と重なる唇。
触れるだけの唇は、ちゅっと音を立てて離れた。
こんなキスだっていつぶりだろう。
気分が乗ってきた沖田は、健全な土方の体に抱き付いてデートがしたいと申し出た。




『俺、で良いのかよ。』

「良い。」

だって結局は夢だし。
現実から離れて好き勝手できるのは、ここしかない。
ここでしか癒されない事もある。
浮気でも何でもない。

………浮気?




(あ…、)

なんか、ちょっと思い出した。
そうだ。
土方さんが女の人と歩いてて、それだけならまだしも、そのままラブホに入ってった。
それが許せなくて、土方の部屋を荒らして寝たのは覚えてる。
そうそう、これが全容だった。




「………………。」

『どうした。』

「…俺は、」

『…………。』

「土方さんとの関係を終わらせたいって、思った。」

『……………。』

「でも夢に見てるってことは、俺が引きずってるだけって事ですよね。」

『…かもな。』

「まったく、どこまで俺の気を引きたいんですか…あんたは。」

ガキだガキだと言ってたくせに。
俺の中で、愛はもう終わったのに。
俺の夢の中にまで出てくるとか。
気持ち悪いったらありゃしない。




「あんたは、俺が夢見る土方さんって事ですかね。」

『さぁな。
ただこの場所であれば、お前は傷付かないし誰も傷つけない。』

「……………。」

『その絶望を、どこにぶつけたい?』

土方の手が沖田の頬に触れる。
そして一粒の涙がつたう。
愛情の手前、憎しみの途中。
そんな心をどこに吐き出せば良いのか。
考えるが、今すぐには答えが出ない。

今ここで、目の前の土方を殴れば満足か。
それともドラマっぽく平手打ち?
はたまた心中?
今の心は狂暴すぎて狙いが定まらない。




『総悟。』

「……………。」

『提案だが、悩むなら寝ないか?』

「寝る?」

『一服するって話だ。
混雑してる脳内を一度リセットしよう。』

「ここは俺の夢の中、なのに?」

『おかしいか?』

「多少は。」

『だがここはおかしな世界、だろ?』

「……………。」

『この世界観は総悟の趣味じゃない。
だがその一方で、こういった相反する世界に少しは興味がある。
ならいっそ夢の中で飾り付けて実践しようって話だ。』

「…超現実的なご説明ありがとうごぜーやす。」

『寝不足や苛つきは夢の中には不要。
しっかり除去しねぇとな。』

「ん。」

『寝て起きて、目の前の世界がどっちなのかはわからねぇが。
いったん休むのもありだろ。』

「……それも、そうですね。」

クスクスと笑う沖田に合わせて、土方も笑う。
今まで余裕の無かった気持ちが嘘のよう。
これなら気持ち良く寝られるかもと、沖田は土方の横に寝転んだ。
合わせて土方も寄り添うように寝る。




「ただし、それで許してもらおうなんて考えてたら殺しますぜ。」

『わかってるさ。』

土方の腕枕に頭を乗せ、沖田は目を閉じた。
固かった地面は、どこかふんわりと柔らかい触感になっていた。
これなら寝違えなくて済む。
ってここは夢の中なのに。
そんなノリツッコミを重ねつつ、沖田は目を閉じた。




(現実に戻ったら盛大に振ってやる…)




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