「食べてる」と血影はこちらを見ずに返事をした。ゴミ袋の中で連なったカップラーメンの器がかさかさと音を立てる。俺が袋をまとめる度に食事の心配をするものだから、何か言う前に言葉を発したのだった。
「体重何キロ?」
「知らん」
「絶対骨と皮だけだよ。よく乾麺だけで動けるなぁ……」
スマートフォンをなぞる指は細長く不健康に見えた。ゲームをしている訳では無いらしく、一定間隔で指を上へ上へと動かしている。暇を指で潰しているのだろう。血影が寄りかかったソファは少しだけ沈み込んでいる。ゴミ袋をテーブルの脇に置き、血影の隣に詰めて座った。ソファは重さ二人分、フローリングに近くなる。
「鳥って骨がスカスカだから軽くて空を飛べるんだって。血影もそのうち風に飛ばされちゃうかもよ」
「飛ばされそうなのはお前だろもやし」
「俺は人並みにあるもん、体重」
血影は眉間に皺を寄せて何か言いたげな表情をした。そのタイミングで血影の端末から軽やかな通知音が鳴って、彼は電話で席を立つ。
広くなったソファに一人分の重み。自分だけも似たようなもので、あんまり沈まなかった。俺もそのうち空なんか飛べてしまうのかもしれないなんて思って、テーブルの上のクッキーを二つ同時に頬張る。
クッキー二つ分だけ、俺は空から遠ざかった。