ぐーぐー
それはルーチンと呼ぶにはご無沙汰ではあるが、それなりの頻度の。学生の頃と比べたらのんびりとした朝を迎えて、なんとなく体を触られているうちにあれやこれやと服がどこかに消えている。
野球をやっているから体力だけは有り余っていて、休日の発散先がその方向に向きやすい。運動したいけど、筋肉は休めたい。それがピッタリの方法があって。本当に?嘘かも。
あーだこーだ言っているけれど、まぁ単純な話普通にセックスは好きである。主導権を握って相手のことを喜ばせるのは自分の性に合っている。でもあまりにも相手の体力が多い時、その奉仕精神が最後まで付き合えるかといえば別の話だ。それを日々実感している。
「もう一回……」
「ん……いいよ、」
情欲を宿した瞳に射抜かれて、本日何度目かの肯定をする。とっくにモーニングの時間は過ぎていて、朝にランニングがてらカフェでパンケーキを食べるプチ計画が潰えた。
唇を味わうように吸われて、口内の蹂躙を許す。こんなのなんてのはパンケーキのシロップより甘い。息継ぎもままならなくて、鼻から上擦った声が抜けた。
背骨から突き上がる快楽にまた身が跳ねて、結ぶ口もないままに唸る。昔は手離しで身を任せることが怖かったけど、今は少しだけ傾けることに慣れてきた。
ぴんぽーん。
そんな甘ったるい空気の中を、電子音が響く。残る理性を手繰り寄せ、状況把握に思考を回した。ああそうだ、さっきピザ頼んでたんだ。
こちらに意識を呼び戻そうと、回した足でミヤの背中を小突く。
「ミヤ、抜いて」
「んん〜……」
「ミヤ」
頭をよしよしと撫でると、ゆっくりと身体をどける。若干不服そうだったが、鼻先にキスをしてやると眉間のシワがなくなった。
ぴんぽん。催促のインターホンが鳴り、反射的に返事をする。その辺に投げ捨てられたTシャツを着て、髪を直して、急いで玄関先に向かう。
「すいません、マジで……」
若干息切れをしながらドアを開けると、人の良さそうなドライバーはにこやかに挨拶をした。ピザを受け取って、代金を財布から取り出そうと体勢を変える。
「あー……」
そこで自分がいつもよりサイズが緩いシャツを着てることに気がついた。やっちまった最悪。
胸元ガバガバ過ぎて色々見えてたらどうしよう。考えれば考えるほど、変な汗が出てきた。どっか吸われたっけ、齧られたりしたっけ。変なアザとか出来てないよな?
いくら考えても思い出せず、緊張しながらも代金をやっと店員に握らせた。
「ねー、宅配便?」
奥からそんな声がして、肩が跳ねる。
やめろ、緊急事態をややこしくするな。なるべく悟られぬように穏やかに、明るく後方に声をかける。
「出てこなくて大丈夫〜! あの、ありがとうございました。お仕事お疲れ様です」
こちらも営業スマイルを返し、失礼のない範囲の最速でドアを閉めた。
どうやら山場は越えられたらしい。
ピザを持ってリビングに戻ると、暇そうにベッドに転がるミヤが視界に入る。俺はテーブルにピザを置いて、ベッドサイドに腰掛けた。
「ピザ届いたけど食う?」
「え、ピザ! やったぁ」
と喜ぶ素振りを見せるも、ミヤは俺の腕を引っ張りベッドの中に引きずり込む。Tシャツが大きく捲れて、腹が冷たい空気に晒された。身震いすると、ひたりとお腹にミヤのあたたかい手が触れる。
「でもまだやるでしょ」
「いいけど……」
チーズってさ、伸びるからいいんじゃね?
かちかちのピザとチーズを哀れんでいると、唇をぺろりと舐められた。まぁいいんだけど、いいんだけどね。だって俺、しょっぱいのより甘いのが好きだし。
唇を舐め返して、聞こえるように音を立ててキスするとまた瞳の奥に火が点る。
次に俺が仕方ないなとミヤに言う、そういう合図で。