デイドリーム・ビリーバー1

「めー」

その声は僕を呼ぶための、鳴き声に似た愛おしい音。
さらりと前髪を掻き分けられ、痛くない日光が瞼越しに当たる。
寝返りを打とうと動けば、柔いものに当たりそういえば膝枕してもらっていたのだと思い出す。
心地の良い春風が、遅れて周りの子供の声を運んでくる。薄らと瞼を開けて彼女を見つめると、頭をあやす様に撫でられた。

「キスしてくれるのかとおもった」
「しないよ。外だしね」
「残念だなぁ」

起き上がって、透子の太腿を解放する。彼女は足を二、三度曲げて伸ばすと僕の隣に身を寄せた。

「結構寝てたかも。足大丈夫だった?」
「それだけ疲れてたってことだよ。へーき」

愛らしい彼女の頭を撫でると、するりとその手から抜けて僕の膝に頭を落とす。つまり、僕を起こしたのは次自分が寝るためだったということ。
そりゃそう。不公平だと、僕でも思うから。

「おやすみー」
「ふふふ、ゆっくり寝ていいから」

昼の休憩時間はとっくに過ぎている。またどやされるのだろうなと思いながら、規則的に彼女の頭に触れた。