やわらかい

まだ幼さの残る柔らかい唇が触れる。添えられた手の温度はぬるくて、頬の熱が移ってしまいそうだから妙に気恥ずかしかった。お願いしたのは自分だった。
世司はお願いしたらしてしまうってこと、分かっていたはずなんだけども。
程なくして、子供のイタズラみたいなキスが離れる。

「あのさぁ……」

どんな表情をしていいかわからずに、顔を逸らした。視界の端に映る世司の顔は笑っているように見える。

「嫌だった?」
「……俺がお願いしたんだし。まさかすぐされるとは思わなかったけど」

世司は申し訳なさそうに眉を下げた。
正反対で眩しくて、ずっとずっと欲しいもの。それは欠けたピースを求めるのと似ているのかも、分からないけれど。
世司の片頬に手を伸ばして、むぎゅと掴む。驚いた顔でこちらを見つめるので、おかしくて鼻で笑ってやる。

「いひゃいよ」
「変な顔」
「帳がしてるんじゃん」
「そうだね」

手を離そうとすると、世司が徐に俺の頬に手を伸ばして同じように引っ張った。それは皮が伸びるだけで、痛くはない。世司が口の端を上げた。

「変な顔」
「そうかも」
「痛い?」
「全然」

そうして変だねってふたりして笑う。変化なんかなくたっていいから、世司がこの頬っぺたみたいにずっと柔らかくありますように。