影浦雅人
男の子だって大変
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「おいコウ。面かせ」
教室で面かせって…何の呼び出しだろうと思った。
見た目が強面だから、カゲのその言葉はなんか様になっている。
…いや、そうじゃない。
何でカゲからこんな風に言われるのか考えてみる。
カゲに対して後ろめたい事もないし…そういえばさっき宿題を出されたな。
「宿題一緒にやる?」
「チゲーよ。
……いや、一緒にやってくれると助かるけどよ」
あーと言いながら頭を掻くカゲが何を言いたいのか俺に分かるわけがなく、
言い出してくれるのを待つしかない。
俺はじっとカゲを見る。
「あ、くそ…テメェ分かりにくいんだよ」
「何が?」
「買い物に付き合え」
「なんだー買い物か!いいよ!で、何を買うんだ?」
「分かんねぇ…」
「え?」
買い物に行こうと誘っておいて分からないはないよな?
もう一度聞いてみる。
何を買いに行くんだと。
だけど返ってきたのは同じ返事で、流石に呆れるしかない。
仕方がない。聞き方を変えてみよう。
「何で買い物に行きたいだ?」
「…………だ…」
「え…?」
「だーかーら、バレンタインのお返しだって言ってんだろ!?」
「嘘、だろ…カゲ貰ったのかよ……初耳!」
「ったりめーだ、初めて言った」
そんなドヤ顔して言うなよ。
アレか、ボーダーやっているとモテるのか!
高校二年生がもうすぐ終わるっていうのに、
未だに貰えていないのはそれが原因か!?
あ、ヤベ。俺が残念すぎて涙出そう。
しかし、泣いている場合じゃない。
友人が恥を忍んで?頼んでいるわけだ。
できることなら力になりたい。…が俺でいいのだろうか。
「こういうのゾエとかの方がいいんじゃないの?」
「ゾエ達に言うとむず痒くなるから買い物どころじゃねぇ。
…コウは分かり難いからこういう時楽なんだよ」
「よく分からないけど俺、褒められてる?」
「だからそう言ってんだろ!」
「じゃあ、買い物行くか?」
ーということで俺達は買い物に来た。
カゲの言うことはたまに分からないけど、
人には適材適所というものがあるらしい。
今回の件はデリケートな内容だからと言われた時、
カゲにもちゃんとデリケートという単語が存在していてほっとした。
それにしてもカゲが女の子にお返しか……。
彼女がいるとは聞いていないから、誰だろう。
「お返しするのってカゲの好きな子?」
「ばっ……!」
カゲが赤くなった。
これは決定だ。
好きな子から貰ったな…両想いかーそうだよな。
カゲがお返しにと考えるくらいだから好きな子とか、感謝している相手に贈るよな。
見た目はアレだけどカゲは義理堅いとこあるし、面倒見いいし、うん、納得した。
「ちゃんと選ぼうな」
「お前、鋼みてぇな目で見てくんなよ」
「村上?あんなイケメンと同じ目なのは光栄だな!」
何か知らないが今日のカゲは俺を褒めてくるなー。
珍しいから有難く頂戴しておこう。
「ち。おい、コレにするぞ」
「言ってる側から適当に選ぶなよ」
「アアァ?」
そんなに凄まれても怖くないからな。
ぽかっと頭を叩いてやると、
コレでいいんだ…と言葉が返ってきた。
なーんだ、決めてたんじゃないか。
カゲ、それじゃあ早速レジに行くぞ。
「コウが行ってこい」
「え、何で?」
「金は後で払う。あークソ」
何故いきなり悪態つかれるんだ?
…別にいいけど。
俺は会計するためにレジへ。
そこで店員のお姉さんと目があう。
お姉さん、クスクス笑ってるじゃないか!
カゲ〜〜〜〜!!!
俺は勢いよく振り返った。
だけどアイツ、俺の睨みなんて痛くも痒くもないらしい。
寧ろお姉さんの視線から逃げるように離れてる。
…え、俺の眼力ってそんなに迫力ないのか?
ちょっと傷つく……。
無事に買い物を済ませた俺はカゲのとこに行く。
「カゲー」
「五月蝿ぇ」
「耳を塞ぐな、目をそらすな」
「お好み焼き奢ってやる」
「それ、お前のとこのだろ!」
「嫌なのかよ」
「…なわけあるか!美味いよチクショー!」
「……早く行くぞ」
「待てよ」
足早と移動するカゲに着いて行く。
何かお姉さんに笑われたらしい。
俺気づかなかったけど、鈍感って言われた。
カゲに言われたくないけど、
確かにコイツ、人の視線に敏感だよな…。
「カゲ」
「何だ」
「頑張れよ」
「……あぁ」
「あと、彼女の写真よろしく」
「……分かったよ!!
いいか、ゾエ達にはまだ言うなよ」
「何で?」
「……覚悟する時間がいる」
そんな殺されるわけでもないのに。
まーボーダーの面子を思い出すと、からかわれるのは間違いないか。
「お前、本当貴重な奴だな…」とよく分からない褒め言葉をいただいた俺は、
とりあえずお礼を言ってみた。
まーアレだ。
頑張れよ、カゲ。
20160307
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