出水公平
不意打ち


アキと付き合って二か月が経った。

アキはちょっと引っ込み思案な子で、
同じクラスだけど最初はあまり会話した事もなかった。
だけどクラス行事…球技大会とか体育祭、学園祭とかそういうやつ。
それで何度か接点があって少しずつ話すようになって、
なんとなくぼーっと眺めていた時に目が合うようになった。
…すぐ逸らされたけど。
そういうのが何度か続くと気になってくる。

「最近目がよく合うよな」

って一言おれが言うと、
アキは顔を真っ赤にした。
「ごめんなさい」と言うアキは、
素直に見ていましたと言っているようなもので、
誤魔化せばいいのにそんなことしないとことか、
可愛いなと思ったし、なんかいいなと思った。
それがきっかけで目が離せなくなって、
気づいたらおれが告白してた。
アキの行動からおれの事どう思っているのか…まぁその分かってたんだけど、
それでもやっぱり緊張したし、OKと返事がもらえた時は凄く嬉しかった。

付き合い始めてもアキが引っ込み思案なところは変わっていなくて、
手を繋ぐのは俺の方から。
可愛くて抱きしめると顔を真っ赤にさせる。
なにこの生物。
可愛くて可愛くてしょうがないんだけど!
本当はキスもしたいけどなんだかその顔を見ているとできなくて…。
ぐっと堪える。
引っ込み思案なりに一生懸命やっている事も知ってるから、
おれたちはおれたちのペースでいっか。って、
そう思えるのはアキが可愛いからだと思う。

おれたちのペースでいい。

そう思ってはいるけど、
たまには彼女の方から手を繋いでほしいとか、
キスしたいなーとかやっぱり思うわけで。
アキが好きだからこそ、
彼女を優先したいのと、おれの煩悩がいつも内側で攻め合っている。
今のところぎりぎり、かろうじて煩悩の方が負けている。
よくもつなーって言われるけど、
惚れた弱みって奴だからしょうがないだろ。
でも少しだけ…、
からかったりするくらいなら許されるんじゃないかなって。
本当に少しだけな、思ったりもするわけで。


今日はデート。
待ち合わせ場所にアキは走ってきた。

「ごめんなさい、遅くなっ…」
「時間ぴったりだよ。
走らなくてもよかったのに…」
「だって、公平くんが見えたから」

おれの姿を見て走ってきたって言うアキ。
マジで可愛い。
今すぐ抱きしめたいのを我慢してちょっとだけ意地悪。

「じゃあ、お詫びにアキから抱きしめてー」

言うとアキは真っ赤な顔してあたふたするんだろうな。
いつも一緒だから分かるその反応を想像して笑う。
たまにはアキの方からして欲しいけど、
無理強いはしない。
少しあたふたしているのを見たら「冗談」って言うつもり。
それでおれの方からアキを抱きしめる。うん、いつも通り。

案の定、アキは顔を真っ赤にしてあたふたしている。
ちょっとやりすぎたかなーって思うけど、
見てて飽きないんだからしょうがない。

「悪ぃ、ちょっと調子に乗っ……!」

…え?
ふわっと甘い匂いがした。
アキがおれを抱きしめて…え?

「わ、私も公平くん抱きしめてみたくて…!
やっとできたぁ…」

そう言って恥ずかしそうにおれを見上げるアキ。
すげー可愛い事言われたんだけど。
え、おれどうすればいいの!?
アキと目が合う。

「公平くん顔真っ赤」
「〜〜〜!!」

そんな事言われても、
アキからしてくれるなんて思ってもいなかったんだよ!
恥ずかしいのと嬉しいのとで…あーやばい。
アキ、可愛さ通り過ぎて、
凄く好きなんだけど!!!

「たまには、こういうのいいかもしれないね」

そんな爆弾発言されて、
おれ、もう死ぬかもしれないって思った。


20161206


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