ボーダー級エイプリルフール
国近、太刀川隊辞めるって


アキちゃんがいないと始まらないんだよ〜
と言って連れてこられたのは太刀川隊作戦室。
「どうしてアキがいるの?」
そうなのだ。アキがここにいるのは先日国近とゲーム勝負して負けたところから始まる。
負けた方は勝った方の言うことを聞くというありきたり罰ゲーム。
国近相手にゲームで勝負したのがそもそもの敗因だが、
二人共通で知っていて勝負になり得るものがあるとしたらゲームしかなかったのだ。
しょうがない。
因みにこの勝負を持ちかけてきたのは国近で、
持ちかけた時は既に何をさせる気だったのか…彼女の中で決まっていたに違いない。
でなければ、こんなことさせるはずがないのだ。
アキは国近の言う通り罰ゲーム実行中なのである。
太刀川隊作戦室に入ること自体はなんともないのだが、ちょっと気まずいらしく、先程から隊員の誰とも目を合わせなかった。
そんなアキの心情に気付かず、国近はマイペースに話を続けている。

「あれ、唯我君はいないの?」
「アイツ今日防衛任務だぞ」
「そうだった?
 なら、しょうがないよね〜」
「柚宇さん、それでどうしたの?」
太刀川と出水の視線が痛い。
しかし目を合わせると負ける気がしているアキは心を無にするため心の中で念仏を唱えている。
この時点で心は無になっていないが、
それだけ後ろめたい事があって冷静になれなかっただけなのだ。
この時のために一日かけて念仏を暗記してきた。
大丈夫、今のアキは何があっても冷静で且つ心を鬼にできるはずだ。
怖くない怖くないと言い聞かせるために念仏を…。
「実は私太刀川のオペレーター辞めようと思って」
「「は!?」」
二人が凍り付いた。
国近大事にされているんだな〜とその様子を見て先程まで唱えていた念仏を中断するアキ。
「え、何その冗談?エイプリルフール?」
「違うよ〜今クリアしたいゲームがあるんだけど、
オペレーター業務してたら中々進められそうになくって〜
それで思い切って辞めようと思ったの」
「ヤベー何かリアリティある」
「国近ー考え直せ!」
太刀川が本気にしている。
出水は分かっているのだろう。
それでなんでアキがいるのか、そちらの方が気になるらしい。
国近に続きを促せば満面の笑みで答えが返ってくる。
「いきなり辞めると大変だと思って…。
アキちゃんを後任オペレーターにしたの!」
「どうも。太刀川隊のオペレーターになりました。
新人なので優しくしてください先輩。頼りにしてます先輩。よろしくしてください先輩」
「しねーよ」
「アキ…棒読み過ぎるだろ…」
太刀川だけマジレスしている。
対照的に国近は楽しそうだ。
「それじゃあ引き継ぎのために模擬戦やろうよ」
「え」
「神威のためとかめんどい。だから国近戻ってこい」
「えーどうして!可愛い後輩のために教えたいの〜」
「柚宇さん、それが目的?」
「違うよ〜」
満面の笑みで答える国近。
なんかもうぐだぐだだった。


20150403


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