君に贈る白い薔薇
死ぬまで私の愛は変わらない


「今日はお休みだったんだ?」

彼女の部屋を訪ねての開口一番の言葉。
どういう意味なのかと嵐山は首を傾げた。

「ボーダーあるじゃない」
「ああ、でも毎日シフトに入っているわけじゃないぞ?」
「知ってるよ、あ、上がって」

素っ気ない言葉を使いつつもアキの言葉の端々が弾んでいる。
嵐山は遠慮なくその言葉に従う。
幾度なく訪れる彼女の部屋はいつも片付いている。
テーブルの上には先程まで読んでいた雑誌が広げられ……そのページを見て嵐山は納得する。

「なんだかちょっと恥ずかしいな」
「何を今更」

雑誌に組まれているボーダー隊員の日常特集。
時期が時期なだけに察しが付くだろうが今が旬であるホワイトデー。
ファンの皆様にとっては気になる特集だろうが嵐山と付き合っているアキにとってピンポイントすぎる話題。
最初はどうしようか悩んだが結局購入して読んでしまったのだ。

「それでマカロンくれるの?」
「ん?違うぞ」
「雑誌と違うけどいいんですかー」
「ああ、アキを驚かせたくて」

つまりアキが雑誌を読むのが分かっていたということだ。
自分の行動がバレて恥ずかしくなったアキは顔が赤くなる。
彼女の反応を見て上手くいったと嵐山はプレゼントを渡す。
「開けてみて」という優しい声で囁かれる。
嵐山の言葉に従い箱を開けてみれば中に入っていたのは樹脂製のドーム。その中には雪のように真っ白の薔薇が四本入っていた。

「綺麗……」

アキは呟いた。

「これって本物の薔薇?」
「ああ。プリザーブドフラワーだから数年はそのままだ」
「へー」

貰った時の想いをずっと形にして残せるなんて素敵じゃないか。
そんな風に思ったのに出てきたのは言葉になっていないただの音。可愛げがないどころか愛想の欠片もない。だけど嵐山に手渡されたそれを見つめるアキの目は言葉にしなくてもどれだけ感動しているのかは分かる。

「どこに飾ろうかな」

言いながらも自分が一番目にする場所にアキは白薔薇が入ったドームを置く。

(ずっとこのままでいられたらな――……)

それはどちらが想ったことだったのか。
アキの後ろから嵐山の腕が絡みつく。
それに応えるようにアキは嵐山に身体を預ける。

――自分のこの気持ちは決して変わることないだろう。

漂う雰囲気が物語る。
二人は言葉を交わすことなくただこの余韻を堪能した。


20180315


<< 前 | | 次 >>