分岐点
迅悠一
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ボーダー基地の開発室にて、
あかりは先程まとめていた紙を自分の机に置く。
迅の用事は何かと聞こうとしたところで、最近の調子を聞かれる。
「調子?いつも通りですよ」
「無茶していないようでなにより」
どこまでやったら無茶になるのか…
一度限界値突破をした事があるあかりはどこまですれば皆に心配をかけるラインなのか分かっている。
緊急な任務でない限り無茶もしないようにしての今。
迅がこんな事を言うという事はサイドエフェクトでどこかの未来が視えたのだろうか。
あかりはじっと迅を見るが、迅は苦笑するだけだ。
「オレの後輩たちは人を見るのが好きだよなー…ぼんち揚げ食う?」
迅に差し出されたぼんち揚げを手に取る。
「そういえば次の防衛戦の打ち合わせって…例のですか?」
「やっぱりエンジニアのとこには話、行っているか」
「冬島さん中心にトラップ開発して…私は防衛の方を担当しているので」
「あーそれで壁の修繕にあかりちゃんか」
「はい。千佳ちゃんが穴をあけてくれて助かりました」
先日回収したトリオン兵を元に敵の攻撃力を想定して壁の強化とシールド強化だ。
いつ攻められるか分からないがそれまでできることはなんでもするつもりだ。
それが非戦闘員がの仕事である。
「あとは自動回復機能もつけたいんですけど、
構築とトリオン量に問題があるので現実的には間に合わないだろうなー…」
今後の事も考えて…と、
自分の考えを話し始めたあかりはそのまま放置するとアルゴリズムをひたすら考えていきそうだ。
別に悪いことではないが、
このままだと本題に入れないので今回は悪いが迅は口を挟ませて貰うことにした。
「大規模侵攻の時、あかりちゃんにお願いしたい事があるんだよね」
「お願いしたい事ですか?」
「そう。攻められてきたらあかりちゃんには防衛戦に出ないで本部に待機しておいてほしいんだよね」
「待機?
戦力外…足手まといになるからということですか?」
「違う。逆、逆だよ。
どう見ても基地が襲撃されるっぽいんだよねー。
外で敵と交戦して抑えられればそれに超したことはないんだけど」
「壁の修繕強化だけじゃ足りない。…ってことですよね?
冬島さん達に伝えて中にも仕掛け用意するんですか?」
「そのつもり。
でもそれだけじゃ足りない。
それとは別にあかりちゃんの力を借りた方が未来が少しいい方に変わりそうなんだ」
「非戦闘員の保護…トリオン関係ですか?」
それなら納得ができる。
もともと防御に徹しているあかりの戦闘スタイルは相手を倒すよりも、
防御や援護といったサポート面の方が強い。
A級隊員でもないのにエンジニアという立場を利用してトリガーを改造している事もそれに含まれるが、
それはそれとして置いておこう。
迅の言い分から察するに、
自分の力…サイドエフェクトの事だろう。
それが必要という事は何か緊急で情報の解析をしなくてはいけない状況になるのだ。
ならば確かに他の人には頼めない、あかりにしかできない仕事だ。
迅が言いたい事を正確に察したあかりは頷いた。
今回は間違えたりしない。
そう胸に誓った。
「あとできれば…いや、これはあかりちゃんに任せるかな」
迅が言葉を濁す。
こういう時は言ったら望まない方向に未来が確定するか、
本人に選択を委ねる時だ。
なんだかんだで四年もボーダーで付き合っているのだ。
お互いの性格も在り方も、
特にサイドエフェクトを持つ者同士、自分の役割についても理解できている。
だからあかりは頷いた。
自分達は世界平和の他に大切なものがある。
友達、仲間…ボーダーがなければ出逢えなかった者達だ。
「あかりちゃん本人からの許可も得たし、
人員配置は大体こんなもんか。
後輩にこれだけ任せているんだからオレも頑張らないといけないなー」
迅の言葉は他にも未来を変えるために尽力を求めたという事だ。
それだけ今回の防衛戦は大規模になるようだ。
――自分にできる事を増やそう。
あかりは後でチビレプリカと相談し、
できるだけ最善の態勢で受けられるようにしようと準備をする事にした。
20160613
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