分岐点
大規模侵攻

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※トリオン体特殊設定あります。


『門発生。門発生。
警戒区域付近の住民は直ちに非難してください――』

トリガーを起動したあかりと烏丸学校の校舎を出たところで本部から、
隊を組んでいるところはまずは合流してから防衛任務を当たれという指示が飛んできた。
そしてソロ活動をしているB級は合同チームとして、
共に防衛任務に当たれという事だった。
烏丸は玉狛第一部隊なので、一旦隊員と合流しないといけない。
そしてあかりも本来ならその合同チームに合流すべきだが、
今回は迅からの指示で本部へ行くように言われている。
本部にもそう伝えれば許してくれるだろう。
あかりは心の中で作戦指揮をとっている忍田本部長に謝った。

「お、京介にトリオンバカ。
お前ら今日非番なの?」
「米屋先輩…それから出水先輩も」

彼等も同じ学校に通っているため、
非番ならここで会うのは別に可笑しい事ではなかった。
それにしても、近界民が攻めてきたというのに、
いつも通り、緊張感のかけらもない。
あかりと違って実践経験があるからだろう。
彼等は慣れていた。

「先輩、レイジさん達と合流しないといけないので、
あかり任せてもいいですか?」
「京介、お前本当コイツの保護者な」
「オレには可愛い妹がいるのであかりはいらないです」
「わ、酷ぇー」
「…酷いのは皆だと思います」

弄られたせいか変な緊張感が抜けたあかりはいつも通り平常心を保つ。
部隊合流優先の為、烏丸はここから一足先に離れた。
そして彼等の行く先だが…

「あ、よねやん先輩たちだ」

一人減って、一人増えた。
自分たちよりも少し幼い少年、緑川が入ってきた。
そういえば高校から近いとこに中学校があった気がする…とあかりはぼんやりと思った。

「とりあえず、各部隊まとまってトリオン兵を叩きまわる作戦らしいです。
ここからだと南部のポイントが近いですね…。
今、東さんたちが交戦しています」

あかりは強化レーダーを選択する。
あかりのサイドエフェクトはトリオン情報を視覚化…すなわち読み取ることが出来る。
トリオン体の時はトリオン情報がダイレクトにくるので、
最初は荒波に呑まれるようで酔って苦労したが、
そこはトリオン体でカバーした。
隠密機動をメインとする風間隊は、
カメレオン使用時のトリオン消費を抑えるべく、
トリオン体自身にそれを軽減する機能が付いている。
その分、トリオン体換装するのに他の人間のものに比べてコストは掛かる。
あかりのもそれと同じだった。
あかり様に設定されたトリオン体は視覚支援、感覚補正などが入っているため、
風間隊のトリオン体よりもコストは掛かる。
回収班の仕事を優先にしているからこそ割り切っての換装だ。
余程の事さえしなければ換装を解いた後も気分が悪くなったりはしない。
あかりは周囲を見渡す。
そして自分の目に入りこんできたトリオン情報を強化レーダーに反映させた。
いつもならトリオン兵がどの辺にいるのかしか分からないのも、
更にはトリオン消費コストで敵の強さまで分かる優れ…ているのかは本人にはよく分からない。

「この辺りはモールモッドとバドしかいない。
結構分散しているな……。
先輩たちの実力ならここを通りながら一掃した方がいいですね。
特に道中のこのトリオン兵は他のより少し硬めなので優先的に狙った方が他のB級隊員のためになります。
あと、ここから近い合流ポイントにいる東さんのところ、
光が見えたので恐らく人型がいるのかと」
「うわー、星海先輩のサイドエフェクトってこんな事できるんですね」
「まーこいつの分かりにくいしな。普段がアレだし」
「…普段がアレなB級隊員なので、先輩達よろしくお願いします」
「いや、お前も働けって」

そんな感じでああやこうやと言いながら移動を開始する。
流石A級隊員。トリオン兵を次から次へと倒していく。
あかりはその後に続けばいいのでかなり楽だった。
米屋、緑川がモードレットを一突きにして撃退していく。
今回のような数の勝負の時は攻撃手が全てを捌くのは難しい…というか無理だ。
通り抜けてきたトリオン兵を排除するのは射手の仕事だ。
出水とあかりは問答無用でアステロイドで撃ち抜いていく。

「私、迅さんの指示で本部に行かないといけないのでここで別れます」
「迅さんからの指示!?あかり先輩ズルい!!」
「緑川落ち着けって」
「あかり一人で大丈夫か?」
「はい、避けていくので大丈夫です」
「……そこは戦おうぜ」

あかりはハウンドを選択し、細かく分割していく。
そして分割させたキューブをいつでも発射できるように待機させた。

「ずりー奴使うのな」
「これがベストなんですよ」

ハウンドは視線誘導型とトリオン追尾型と二つのタイプがある。
それは発射してからの動きの話になるが、
あかりのは一味違った。
エンジニアの権力と知識を使い、自分用に改造しているものだ。
通常なら発射タイミングは自分の意思で調整するものだが、
あかりのは発射前の段階から、一定距離内にあるトリオンにだけ反応するように設定されている。
そしてその距離内でトリオンを感知すると自動的に飛んでいく仕様だ。
おかげで敵がどこかに潜んでいてもハウンドが飛んで行くので敵の位置を把握するのにも丁度いい。
回収班の仕事をしている時にいつ近界民に襲われてもいいようにと考えて編み出されたものだ。
防御姿勢が強すぎるし、現在はあかりで試運転中という事で他の隊員はまだ使用していない。

「そっちに人型いるみたいなので気をつけて下さい」
「はーい、先輩も気をつけてね」
「うん、ありがとう緑川くん」
「あかり、本当に気をつけろよ」
「はい!」

言うと彼等は自分のやることを成すためだけに、
目的地に向かって走り出した。


20160709


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