分岐点
YouB
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※W.Tキャラほぼ出てません。
※合成弾捏造(原作、BBF未確認)です。
あかりが逃げ遅れた人がいないかを確認するために、
既に被害があった区画へ移動していた。
通信室は入るまでもなく被害を受けている事が分かった。
倒れている人を見て、
初めて見るそれに思わず息を呑んだ。
警告音がする。
通信室内にあるレーダーが新たな敵を感知したようだった。
あかりは慌てて確認した。
死んでいないモニタにはカメラが捉えた映像が流れてきていた。
その姿を見てあかりは自分の目を疑った。
別行動をとる際に寺島から、
避難誘導が終わればそのままあかりも避難するようにと指示を受け、
それを了承した。
ここには避難できる人間はいない。
ならば自分は避難をするためにシェルターに移動しなければいけない。
それに従わない事は…
命令違反。
今、戦争中なのに何をしているんだと言われるかもしれない。
しかしそう考えるよりも早く身体が勝手に動いていた。
何かに縛られて行動しなくて、
後悔するのはもうあかりは嫌だった。
それは基地の東側に反応はあった。
C級隊員と集まりつつあるB級隊員が近界民と対峙していた。
幸運にもそこには新型のラービットはいない。
アクシデントがない限り、なんとかできるレベルだった。
あかりはハウンドでトリオン兵を撃ち落としていく。
対近界民訓練でよくやる相手だ。
倒すのは難しくなかった。が、やはりそれを目にしてあかりは心臓が止まるかと思った。
目の前の光景に世界が止まった気がした。
「お、母さ……?」
息を呑んだ。
そこにいたのは人型だ。
しかも見たことがある。あの姿は自分が一番知っていた。
早くA級になって捜し出すと誓った相手だった。
情報を読み逃さない様に、コードからの放出はしないように切り替えた。
身体に負荷が掛かっても構わない。
一つ一つ情報を読み取ると、
それは…この人型と思われる相手は母親と同じトリオン情報を持っていた。
それに若干何かが混じっている。
近界民のトリオン?トリガーだろうか。
今侵攻してきている近界民のものと一部情報が違う事だけ解かった。
それがあかりに気付いた。
躊躇いもなくそれからビームが撃ち放たれる。
「…!」
避けるのは間に合わないと判断したあかりは咄嗟にシールドを張る。
貫通すると思った瞬間、
反射的にテレポータであかりは飛んだ。
シールドは割れてしまったが、幸いにもあかりは無事だった。
自分よりも前から交戦していたB級隊員も何人かはあのビームにやられたらしい。
ベイルアウトの光が見えたが、呑気に見ている場合ではない。
この人は本当にお母さんなのか。
あかりにとって重要なのはそこだけだった。
よく見るとそれは傷をいくつか負っている。
自分たちもやられているがその分向こうにも攻撃を喰らわせたらしい。
最初の動きはどうか分からないが動き自体は決して速くはなかった。
あかりのポジションは射手。
補佐をメインとする戦い方をする。
出水のように自分から先陣を切ることも、火力重視の物量戦もやらないが、
今回だけは事情が違った。
相手は近界民ではない。…かもしれない。
それに気付いたのはあかりだけだった。
本物なのか確認しないといけなかった。
それができるのはあかりしかいない。
「星海、そいつに近づくと撃たれるぞ」
誰かが叫ぶ。
そんなの分かっているが距離を取る方が餌食になるだけだ。
「今、本部に連絡した。太刀川さんが来てくれるらしい!」
その言葉に隊員たちの間に希望がみえた。
安堵する声に、あかりにとっては最悪の一言だった。
――太刀川さんが来る前に…!
あかりは積極的に相手との間合いを縮ませる。
「お母さん、だよね?」
「……」
それは答えない。
あかりは遠慮なく歩み寄る。
相手が手を振りかざしビームを撃ってくる。
いつもならハウンドで当てれば相殺できるが、今回はそれだけじゃだめだ。
ビームは貫通力がある。
当てても威力を少ししか殺すことができない。
だからあかりはハウンドとアステロイドを組み合わせた弾を撃ち込んだ。
威力不足になった相手の弾はそこで消滅した。
ビームの威力を瞬時に見抜いてそれにあわせて配合しなければいけないが、
あかりは自身がもつサイドエフェクトのおかげで相手の弾を読み取り、
作ることができる。
難をいえば、あかりは合成弾を作るのに慣れていないので、
何発も乱用できない。
だから何発かは必然的に避ける、防ぐ等の対応をしなくてはいけない。
少しでも決着を長引かせ距離を縮めていく。
「もう一年、だね…そんなに顔は変わってないと思うけど…。
私が誰か分からない?」
「……」
「お母さん」
「…………」
「私だよ。星海あかりだよ」
「……!」
反応があった。想像が確信に変わっていく。
あかりはトリガーを起動し直した。
トリオン体は登録しているパターンから選択して換装することができる。
あかりは訓練生時代に登録したトリオン体に換装するために再起動したのだった。
それは中学生時代の当時の自分。
メモリに残しておいてよかったとあかりは思った。
その時に比べたらちょっとだけ身長も髪も伸びているし、
このトリオン体だけはちゃんと眼鏡も掛けている。
「お母さん、あかりだよ」
「――!」
それが母親だと確定した。
母親はあかりに手を伸ばす…その直後だ。
あかりの母親の背後から攻撃手がスコーピオンで斬りかかるのが見えた。
「待って!その人は…!」
あかりの声よりも早く反応したのは母親の方だった。
振り返る必要はないらしい。
自分にエネルギーの光を集め発散した。
それは一定距離内にいる敵を下から串刺しにする攻撃だった。
いきなり変えた攻撃方法に対処できず攻撃手がベイルアウトした。
あと一歩。あかりも近づいていたら間違いなく串刺しになっていた。
その攻撃に恐怖して誰かが弾を撃ち込んだ。
この場に指揮官やリーダークラスがいないのが不味かった。
統制がとれていなかった攻撃も、
感情に呑み込まれてしまえば良くも悪くもそれに続いてしまう。
今回は敵を攻撃する方に流れがいってしまったわけなのだが…。
――落ち着け!
あかりは自分に言い聞かせた。
言葉は交わしていないが、反応はあった。
目の前にいるのは間違いなく自分の母親だ。
助けるためにはどうすればいい。
時間があればなんとななる可能性はある。
しかし、周りにそれを指示するには星海あかりという人物は、
防衛隊員として地位も足りないし、人徳も信頼も足りていない。
昔から一緒に共にしていた仲間なら話は早いがここにいるのは違う。
こちらに向かっている太刀川との距離をみる。
やはり、時間はない。
太刀川は敵だと認識したらすぐに一刀両断するし、その力も持っている。
早々に何とかしなければならない。
今自分が装備しているトリガーを思い出す。
メイントリガーにはハウンド(改)、シールド、アステロイド、強化レーダー。
サブトリガーにはハウンド(改)、シールド、バイパー、テレポータ(試作)。
できる事は――――…
「…あかり」
「レプリカ!?」
「このままでは危ない」
今まで身を隠していたチビレプリカが現れる。
それだけ緊急だという事だった。
チビレプリカは急にトリオン濃度が増した事について言っているようだ。
見れば自分の母親を中心にエネルギーが凝縮していく感じだ。
あれは爆発する時の前動作に似ていた。
凝縮具合から見ても規模はでかい。
少し離れたところに民間人も救援活動をしているC級隊員だっているはずだ。
ここで爆発させるわけにはいかない。
「私もサポートしよう」
「お願い…!」
「ああ、…こんな時に悪いが、あかり……」
あかりは咄嗟にテレポータで母親の正面に飛ぶ。
自身のトリオン体に装備されているコードで相手のトリオンと接続した。
あかりは前を真っ直ぐ見つめる。
凝縮したエネルギーが開放しようと光を放つ瞬間、
あかり達はその場から姿を消した。
「ありがとう。ユーマをよろしく頼む」
そしてそこに残ったのは小さな黒いトリオン兵――。
20160709
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