未確定と確定
とあるボーダー隊員の学園祭

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※『勝手なアンケート』で二位を取った風間のギャグ話。
※風間がキャラ崩壊。三上がキャラ崩壊…などなど。




「おっ、明星じゃないか!いいところにっ!!」

諏訪に呼び止められて桜花は立ち去ることにした。

「おい、コラッ逃げんなって!木崎!!」

…のだが、諏訪の一声で溜息をつきながらも、
木崎は桜花を捕獲した。
年齢が同じだからか、同じ大学だからかは知らないが連携が良すぎやしないかと桜花は思った。
「逃げる事ねーだろ?」
「いや、諏訪さんの笑顔が不気味で」
「確かに、そうだな」
「木崎テメェ!」
口喧嘩を始める二人(諏訪の一方的)に、
桜花は溜息をついた。
「一体、何の用なの?」
「お前にはカツカレーのために、協力してもらう」
「は?」
日頃の隠密戦闘に慣れてしまったのか、
イキナリ風間が出てきても驚きはしない。
それよりもカツカレーのためとか訳の分からない事を言っている方に反応した。
風間に限ってそんなふざけたことはしないと思っていたが、
どうやら桜花のその認識は間違っていたという事は、
この後、知ることになる。
「夕方にある、男装女装コンテストに出るぞ」

つまりどういう事か。
時間は少し前に遡る。


本日は風間達の大学で学園祭が行われるらしい。
一般客の入場もOKなため、
三上が桜花も一緒にいかないかと誘ったのだ。
桜花もということは勿論、
他にも行くメンバーがいるわけで、
予想通りというかなんというか、
そこには風間隊の菊地原、歌川と一緒に行く事になっていた。
「なんで僕が…」と相変わらず菊地原はぶつくさ言っていたが、
納得させたらしい。が、
そこに桜花もメンバーに誘われた事で、
更に悪態をつき始めた。
この天邪鬼な性格はなんとかならないものかと桜花は今まで何度も思った。
とりあえず好き放題言わせておいて、
歌川と三上がフォローに回る。
下手に自分が口を挟むより、穏便に物事が進むのである。
三上の言葉により、菊地原が不貞腐れながらも納得し、
桜花も、その日は非番だったので了承した。
そのため本日、彼女たちが風間達の大学の学園祭を見に来たのだ。

学園祭も大学生が羽目を外す機会の一つであり、
誰が参加するのか分からないが男装女装コンテストと名前通りの企画を開催することになったのも、その羽目を外したいが故だったのだろう。
笑いのネタに諏訪は大笑いしながら食いついたが、
木崎と風間は無関心だった。
折角のイベントなのにそれは如何なものかと、
諏訪が二人を吹っ掛けた。
それもそうだなと言った割に、
参加するわけないだろ。言うなら諏訪がやれよと目視する。
面白みねー奴等だなと言いながらとりあえず参加要項に目を通す。
「なになにー…『男女ペアでそれぞれ女装、男装をしての参加。
ペアのどちらかは本校の学生である事。
一般投票を行い、順位を決める。
一位は食堂のなんでもタダ券三ヶ月分贈呈』と。
スゲーな。イベントの割に賞品が豪華だな」
面白可笑しくしたいのだろう。
体育会系の学科やサークルの者が参加しそうだ。
「こりゃ、一反乱あるな。絶対見ようぜ!」
ゲラゲラ笑う諏訪の横でその反乱が起こりそうになっていた。
「食堂のカツカレーは美味いからな」
「あ゛!?」
「どうやら風間が参加するようだな」
自分で言っておいてなんだが…本当に参加するのかと、諏訪は風間を見た。
風間の目は本気だ。
しかも参加するからには優勝を狙うと目が言っている。
食堂タダ券…恐るべし。
確かにこのメンツで一番見れそうなのは風間ではあるが、問題は相手だ。
「そういえば三上達が遊びに行くと言ってたな」
「風間のとこのオペレーターか。
まぁ、お似合いじゃねぇの」
身長が。
きっと可愛らしい感じになるに違いないと想像しているところ、
風間に蹴りを入れられる。
「イキナリ何すんだよ!?」
「なんとなくだ」
「ひでぇ…」
長年の付き合いだ。
口に出さずとも、何を考えているのか分かるのだろう。
そんなこんなで諏訪が蹴られたとこを摩っていると目の前を桜花が通り掛かったという訳である。


一通りの事を聞いて理解した。
なら、三上に頼めば?と口を開けば、
「まぁ、見た目的にこっちの方が成り立ちそうだし」
身長的に。
今度は風間も突っ込まない。
恐らく、準備をするのに時間が必要なのだろう。
お前でいいからさっさとしろと目が物語っている。
「優勝したら一ヶ月分、昼飯を奢る」
「え、」
風間の一言に桜花の心が動いた。
一ヶ月分とは…これはデカイ。
一人暮らし。節約している桜花としてはこれは魅力的な話だった。
「この間、影浦と一緒に訓練生と揉めたらしいな。厳罰を軽くするよう取り計らってやる」
「…そんな事やれるの」
「あぁ。責任を持ってやろう」
風間はやると言ったらやる男だ。
本当にやってくれるのだろうと判断し、桜花は返事をする。
「やるわ」
ここからは仕事が早かった。
スマホで三上を呼び出し、メイクを担当して貰った。
流石オペレーター。
冷静に対処してくれた。
衣装も演劇サークルから拝借し、それなりに見えるようになった。
三上が頬を染めるくらいには会心の出来である。



そしてこのまま、二人は出場した。



『男装、女装コンテストカップル杯〜エントリーナンバー1の入場でーす!』

それはもう想像通りの出来と盛り上がりだった。
女装している男子はもう悪乗りしているので、
例えばセーラー服着ているのにすね毛は剃ってないので気持ち悪いとか…
見た目だけで言うなら見るに堪えない姿だったりするわけだが、
凄く笑えるものだった。
対する男装することになった女子はしょうがなくという感じがほとんどで、
とりあえず、男物の服装をしているだけといった印象だった。
ある意味可愛らしく、一部の者が凄く受けていた。
楽しそうに観覧している諏訪とは反対に冷静に付き添っている木崎と歌川。
菊地原なんて不機嫌オーラー放出しぱなっしだ。
三上は…これからでてくるであろう自分の隊の隊長の勇士と
自分の力作を記録に残すべく、スマホで撮影をしている。

『お次はエントリーナンバー5、風間、明星ペア〜』

その声とともに姿を現した二人に会場は一瞬静まり、
すぐに歓声が上がった。
なんというか、今まで出場したどの組よりもクオリティーが高かった。
最初こそは二人を大笑いしてやろうと考えていた諏訪だが、
もう開いた口が塞がらない状態だった。
結婚式の新郎新婦がテーマなのかウエンディングドレスを着た風間と
タキシードを着た桜花。
小柄だがクールビューティーの花嫁(風間)はなんだか可愛らしく見える。
彼が男だという事を知らなければ、皆女と思うくらいには、
ちゃんとした女装になっていた。
対する桜花も元から中性的な顔つきだったが、
髪を下の方で束ねメイクのおかげかキリッとして大分かっこいい。
多分この人、生まれる性別間違っている。
男装というよりは、本当は男なんじゃないのかっていうくらい様になっていた。
この出来なら確かに三上は記録に残したがるはずだ。

登場後、二人は花道を歩く…所謂結婚式のヴァージンロードを歩く二人のように腕を組んで…。
とその道中、風間の態勢が崩れたのを桜花は普通に受け止めた。
腕を組んでいるから受け止めるしかなかったというのが正直なところかもしれない。
「…ヒールは歩きにくいな」
風間の言葉に、そりゃ普段履きなれていない人間が細くて高いヒールを履けるわけがない。
桜花はそう思った。
あまりヒールを履かない自分でもそうなのだ。
男なら尚更ではないかと思う。
慣れていないなら足首を痛める可能性だってある。
流石にこれ以上は酷ではないかと思って桜花はそのまま風間を持ち上げた。
俗に言うお姫様抱っこだ。
ふわっとドレスが舞った姿は乙女が憧れるワンシーンに違いなかった。
その時、諏訪が噴き出した。
多分この反応は正しいのだろう。
男と女が逆転しているのもそうだが、彼等を知っている者からしたら余計に可笑しかったに違いない。
菊地原や歌川は見なかった事にして現実逃避をし始めている。
お姫様抱っこして何か言葉を交わす姿にギャラリー(主に女性)が盛り上がった。
まるで王子様がお姫様に愛の言葉を囁いているように見えるらしい。
そんな言葉が聞こえてきて、
新郎新婦ではなく、中世ヨーロッパの王子様お姫様の格好でも良かったかなと三上が思ったのは内緒の話だ。
会場にいる人間がそんなことを言っているのを聞いていると
二人がどんな会話をしたのか気になってくるというのが人の性だ。
「あれ、何て言ったんだ?」
「大した内容じゃないですよ」
諏訪の言葉に返事はあっさりと返ってきた。
菊地原にはバッチリ聞こえていたらしい。
別に愛の言葉を囁いたりはしていないが、
それを自分の口から言うのは少々面倒だった。
それでも言わなければ諏訪は教えろと何度も言ってくるのも分かり切っている。
うんざりしながら菊地原は二人の会話を伝える。
「『風間さん、見た目に反して重いですね』
『鍛えているからな。その分、他の者よりは重いだろう』
『そうですね、いい筋肉をお持ちで』
『…にしても、明星もすんなりと持ち上げるものだな』
『生身鍛えておかないといざという時に困るし。
これくらい当然よ』」
筋肉談義に話を咲かせていた。
これはギャラリーの女性達に知られては、
妄想という夢が崩れかねない…残念な内容だ。
「なんだ、アイツ等…面白味ねーな」
面白い会話ってなんだろうか。と歌川が心の中で突っ込んだ。
諏訪の言葉じゃないが、菊地原も面白くないなと思っていた。
実は桜花の言葉の後には続きがあって、
今度一緒に訓練をしないか等と言う話になっており、
筋トレ、ジョギング云々…つまりは生身の肉体訓練の話に花咲かせていた。
(ただでさえ風間さん忙しいのに、あの女何考えてんの!?)
菊地原の機嫌がどんどん悪くなっていった。


投票後、多くの女性票を集めたことで、まさかの優勝という功績をおさめ、
イベントは無事に終了した。
戻ってきた二人に腹を抱えて迎える諏訪に、
風間は容赦なく蹴りを入れた。
「痛ぇな…おい明星。お前の嫁さんだろ!?何とかしろよ」
「諏訪、お前一言多いぞ」
木崎が言うが時既に遅し。
桜花は風間を止める素振りを見せつつ笑顔で諏訪の足を踏みつけていた。

これにて、学園祭は終了である。

その後、風間にお昼ご飯を奢ってもらう桜花の姿や、
二人が肉体訓練に勤しむ姿が目撃されるわけだが、
(だんだん、アイツラ似てきたよなー)
と、思われているとは知る由もなかった。

そして三上のスマホの待ち受けに学園祭の時の二人の姿…勿論、
男装女装している画像になっている事も知る由もなかったのである。


20150910


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