街角の向日葵 - そうめぐ
細い路地裏に足を運べば長年暮らしていた小さな街だというのに、知らない景色が目に入る。何時もと違うパトロールの行き先、決して道が分からなくなったからでは無いと先に断言しておきたい。見知らぬ土地は少なからずとも好奇心を揺るがす。路地裏を抜けると小さな店が立ち並ぶ土地が広がっていた。一件一件、横切りながらも仕事は忘れぬよう、視線を配る。ふと、目先に止まったこじんまりとした一件の花屋が其処にあった。色とりどりの花に囲まれ、エプロンを揺らせながら水をやるその横顔に思わず息を呑む。見惚れる、とはこういうことか。ある程度の距離は取っておいたつもりだったのだが、視線に気付かれたのか、似た色を持つ翡翠色がこちらを捕える。
「あれ?警察の人?」
柔らかい空気が揺れ、心地よい声が耳に届く。話し掛けられるとは想定外だった。咄嗟の出来事に動揺を出さぬ様、あくまでも冷静を装う。
「パトロール中だ」
「そうなんだ!じゃあお客さんだね」
肩口に使える髪をふわふわと揺らしながら駆けてくる彼女との距離が縮まる。
「はい。当店自慢の向日葵お裾分けだよ!」
半ば強引とも言える形で渡されたのは一本の大きな向日葵。名も知れぬ初対面な筈なのに、その向日葵が彼女の笑顔と重なって見えた。