Short story


夢にみた、夢だった - そうめぐ


道を覚えるのが苦手な筈が、行き慣れてしまった路地裏を進む。開けた先の花屋には今日も小さな背中がせっせと仕事に取りんでいた。

「恵」
「あ、ポリスさん!と、じゃなくて…、そーすけくん!こんにちは」
「おう」

向日葵を一本お裾分けされて以来、パトロールを兼ねて花屋に通っていた。会話らしい会話は交わすことはなかった為、昨日、初めて彼女の名前を聞いた。大きな目をぱちくりと見開き、驚いたような表情を浮かべた後、ふんわりとした笑みと共に告げられた名前を何度か脳裏で復唱した。

「今日も向日葵?」
「あぁ、一つ頼む」
「うん!ちょっと待ってね」

何故、こう彼女の元へ通ってしまうのか。向日葵と彼女の笑顔を重ねてしまうのか。自分自身にも理解出来ていない行動に答えは出ない。俗に言う、これが恋愛感情というものなのかとも思い始めるが何分今までその手のものとは無縁だと思っていたから余計に。準備を終え、向日葵を一本抱えた恵が小走りで此方に寄ってくる。

「あ、あの。そーすけくん」
「どうした?」
「この向日葵と交換で、そーすけくんがお休みの日に恵とご飯食べに行ってくれませんか…!」
「…は?」

突然の申し出に情けない声が出る。告げられた言葉は現実か夢か、頬を赤く染めて向日葵を差し出す恵の姿が現実を語っていた。

「ご、ごめんね!いきなりこんな事…迷惑だよね!」
「いや!そうじゃねぇ…」
「え?」
「俺からも、頼む」

差し出された向日葵を答えとして受け取ると、本当!?と、嬉しそうな声と共に向日葵の様な笑顔が咲いた。向けられる笑顔に胸が高鳴る、この想いは。


 | 

ALICE+