20.きみの温かさを知る※

虹村side.

「なあ、お前って苗字とどこまでいったの?」

休み時間、バスケ部で同じクラスの関口が唐突にそんなことを聞いてくるもんだから飲んでいたジュースが変なところに入り思わずむせる。

「ゲホッゲホッ…何だよ急に…」

バレンタインのことや先日の部室でのことがあったからか俺と名前が付き合ってることは学校中に知れ渡っていた。まあ学校一のモテ女に彼氏が出来たんだからそりゃ騒ぐよな、特に野郎どもは。関口はそーゆーの(女とか下ネタ関係)好きそうだからまだわかるけど、その後に久保田までもが「俺も気になってた」とか言うからびびった。まあ年頃の野郎が考えることなんてそんなんばっかだけどよ、久保田も気になってたんか…まじか…

ふと気づけばその2人以外のクラスの野郎どもも聞き耳を立てているのか動きや会話が不自然に停止している。

「(えー…)」
「おいもったいぶってねーで何とか言えよー」

おらおらと肩に肘を擦り付けられる。いや、言えるかんなもん!!しかもこんなクラス中の野郎どもが聞き耳立ててる中で!!

「教えねーよ。つーか言ったら夢壊すかもしんねーけどいいの?」
「……うん、やっぱいいわ。部活で会うたびにお前らのセックス話思い出して嫌な思いするより今まで通り自分と苗字の情事妄想して楽しむほうがいいし」
「…おいこら聞き捨てならねえぞ。てめえ人の彼女オカズにしてんじゃねぇ!!」
「いいだろ妄想するくらいー。お前は帝光男子生徒の夢を奪ったんだ。みんな口には出さねえけどな、今まであんだけモテるのに誰とも付き合わない苗字にもしかしたらを期待して告ったり各々妄想をはかどらせて楽しんでたんだよ。なのにお前だけがその妄想を実現できるとか…苗字が幸せならってみんな温かく見守ってはいるけどなぁ、そんな俺たちから妄想する権利も奪うってんなら…俺はお前を許さねぇ…!」

関口の力のこもった発言にクラスの野郎どもから拍手が起こった。え、なに。俺が悪いの…?しかも冗談で言った発言からもう名前とそーゆー仲になったと思われてるけどまだシてねぇし。こっちはこっちで色々大変なんだっつーの。


例えば部活終わり。着替え終わって部室を出ると、後ろから勢い良く抱きつかれ「おっ…」と驚く俺に「修ちゃんお疲れさまっ」と顔を横からひょこっと出してとびきりの笑顔。か、かわいい…そして背中に押しつけられてる柔らかい感触がやばい。普段ももちろん可愛いけど人前では自分からこういう風にスキンシップをとったりしない名前が2人になった途端すげえ甘えてくるのが俺的にはたまらないわけで。彼氏最高かよ…とか喜びを噛みしめる瞬間は多い。けど、だからこそ理性を保つのが大変だったりもする。

昇降口を出てどちらからともなく自然に繋がれる手。こんな寒くなっても俺が手袋を買わないのはこうして名前と手を繋ぎたいからで、同じくいつまで経っても手袋をしない名前もきっとそう思ってくれてるんだと勝手に思っている。

1人で帰ってたときは寒いし疲れたしでとにかく早く帰りてぇって思ってたけど、今はそんなのが吹き飛ぶくらい名前と2人で帰るのが楽しくて、学校から名前んちまでの距離がもっと長ければいいのにとか思っちまうくらい。その日の部活での話とかそれぞれのクラスで起こった面白話とかして、隣で一生懸命話す名前を横目に見るのがこれまた至福だったりして。思わず笑みが溢れると名前が不思議そうに見つめてくるから、「ごめん、鼻真っ赤にして一生懸命喋ってんのが可愛くて」とからかうと、「もう、ちゃんと聞いてよー。てゆーかそれ修ちゃんも一緒だから!」て笑う名前と道端でじゃれついたり。あーもう俺帝光男子全員に恨まれてもいいや、だって幸せすぎる。


休みの日、名前がうちにきて映画を観たりゲームをしたり一緒に宿題やったりしてまったりとした時間を過ごす。今日はゆるめのニットワンピに極薄タイツか…良き。男がすげー好きなやつ。俺も好き。学校ではあまり一緒にいれない名前との楽しい時間はあっという間に過ぎていく。楽しい時間はあっという間というけれど、本当にそうだなって名前といるたびに実感する。

名前が帰る時間が近づき窓の外が暗くなってくると別れを惜しむように抱きしめ合ってキスをする。いつも学校帰りの別れ際にする重ねるだけのやつじゃなくて、お互いを求め合うような甘くてえろいキス。唇を割って舌を絡ませると2人の唾液が絡まり合うやらしい音が俺の部屋に響く。名前がたまに「ん…」とか声を漏らすのがやばくて俺のSっ気に火がつきそうになる。

更に深く舌を絡ませると名前の口から唾液が流れて激しい口付けにお互い息が上がる。やばい…今日は止められそうにない。

舌を絡ませたまま服の上から胸に手を這わせて揉めば、想像以上の大きさに一気に下半身が熱くなる。

「……んっ…」

名前の感じる顔を見ながら続けていると目を薄く開いた名前と目が合い鼓動が早くなる。なんつー顔してんだよ…

ワンピースの下から手を入れて今度はブラ越しに揉む。自然と服が上がってえろい格好になり、名前が俺の腕を掴んで抵抗するけど止めらんねぇ。

背中に腕を回しホックを外すとそのまま床に押し倒して直に胸を揉みしだく。

「あっ…修ちゃ…っ」

ワンピースを上まで捲りあげブラをずらして胸を吸うと舌を乳首に当ててゆっくり転がす。

「…あっ…修ちゃん…だめぇ…んっ…」

ああ、えっろ…。俺こんな魅力的な彼女とずっと一緒にいて、むしろよくここまで我慢したなと思うんだけど。そろそろいいよな…?

パンツの中に手を入れると中はもう濡れていて、名前がぐっと手に力を入れて抵抗してきた。

「本当にだめっ…これ以上は、まだっ…」
「なんでだよ…お前ももうこんなんなってんじゃん」

やらしい液が絡みついた指を見せると名前はかあっと顔を赤くしてばか…!と顔を両手で覆った。

「はぁ…わかったよ」

かなりやりきれない感は残ってるけど、名前も同じ気持ちの状態じゃないと意味ねぇし…。

「わかったから、手どけろ」

名前の身体を起こすとまだ顔が赤いままの名前に唇を重ねて抱きしめた。

「お前がしたくなるまでこれ以上のことはもうしねぇよ。でも、あんまり長くは待てねーかも。俺、最近お前のこと好き過ぎてる…」

名前の肩に顔を埋めると名前が抱きしめてきて、「ありがとう。私も修ちゃんのこと大好き…」とか言うからまた押し倒しそうになるのをどうにか堪えた。


そんなこんなで俺は幸せな反面悶々とした日々を送っていた。それから少しして、俺たちに春休みが訪れる。部活が休みの今日は、名前がうちに泊まりにくることになっている。言い出したのは名前だ。これってOKってことなのだろうか。名前の心の準備ができるまで待つとは言ったけど、そーゆーのって女から言いにくいだろうしやっぱ俺からいくべき?…て俺最近がっつきすぎじゃね。きも。やめやめ、こんなんばっか考えててもしょうがねーよな。よし、ふつーに純粋に朝まで名前と一緒にいれることを楽しもう。

日中は一緒に買い物してどっかで飯食ってそれからうち来るってことになってんだけど、待ち合わせの時間も近いしぼちぼち家出とくか…。服を着替えて玄関に向かうとスマホが鳴り、出ると母さんからだった。今日はちびたちと親父の見舞い行くって言ってたけどどうしたんだろう。

「もしもし、母さん?どうかした?え…親父が…?」

電話を切り俺はそのまま家を出ると急いで病院へ向かった。入院中の親父の容態が急変したらしい。

俺が病院に着いたときには親父は静かに病室で眠っていて、母さんは俺にちびたちを預けると先生に詳しく病気の説明を聞くため部屋を出ていった。妹は不安そうに「お父さん…大丈夫かなぁ」と聞いてくる。「ああ、父さんは元気になるさ。絶対大丈夫」頭をよしよしと撫でるとぱあっと明るい笑顔を見せる弟と妹に精一杯の笑顔を返した。

だよな、親父。こんなかわいいやつら残してどっかいっちまったりできねーだろ?

俺の心の中の訴えも虚しく、青白い顔の親父は眠ったまま。不安を打ち消すかのようにちびたちの話し相手をしているとスマホが震えて、手に取れば名前からの電話だった。やべ…頭真っ白になっちまってすっかり忘れてたけど待ち合わせの時間とっくに過ぎてたわ。

電話で事情を説明し、今日は会えそうにないことを伝えると名前は納得した。むしろデートすっぽかしてでも家族の側にいるのは当たり前だと俺の行動を正当化してくれる彼女の優しさに救われる。

母さんが戻ってくると心配して駆けつけた親戚のおばさんも一緒に病室へやってきて、とりあえず今日は母さんが遅くまで親父に付き添うためちびたちは親戚の家で預かることになったと聞かされた。

「修造、ちょっと…」と母さんに呼ばれて病室を出ると先生と話した内容を告げられる。父さんは別の病気を併発していて、もう長くないかもしれないと。



「もしもし、修ちゃん?」
「………」
「修ちゃん…?」
「…悪い、今日会えないって言ったけど今からうち来れる?」
「今から…?私は平気だけど…いいの?」
「あぁ。待ってる」

母さんの話を聞いてからどうやって帰ってきたのかもよく覚えていないほど頭の中は混乱していた。親父がいつ死ぬかもわからない状況ってのも現実味ねえし、もしそうなった場合、うちの家族はどうなるんだろう。俺はどうしたら…

「修ちゃん…?ごめん呼んでも反応ないから勝手に入ってきちゃった」

帰ってきてそのままカーテンも閉めず電気も暖房も付けずベッドに座って色々考え込んじまってたらいつのまにか結構な時間が経っていたらしい。

「何かあった?大丈夫…?」

荷物を置くと隣に座り俺を心配そうに覗き込んでくる名前を抱きしめる。

「修ちゃん…」

俺の突然の行動に少し驚きながらも名前は俺を優しく包み込んでくれた。

「…親父がさぁ、もう長くねぇかもって。俺、どうしたらいいか…」

現実味がねえってのもあるけど、家族の前では俺が気丈に振舞っていなければいけない気がしてずっと平静を装っていた。母さんも親父が入院してから仕事の時間増やして働いて疲れている上に今回のことを知らされて色々考えることがあるだろうし、弟と妹ももし親父が死ぬなんてことになったらかなりのショックを受けることになるだろう。俺も高校には行かずに働くことになるのかもしれないけどそんなことはどっちでもよくて。とにかく親父がそんないつ死ぬかもわからない状態だってことがまずつらくて…受け止められなかった。

「俺のせいだ…俺が悪いことばっかして気苦労かけすぎたから親父は…」
「そんなことないよ、修ちゃんのせいじゃないから」
「けど…俺どうしたらいいのかわかんねぇよ…もう何がなんだか…」

名前は俺を抱きしめたままずっと俺の話を聞いてなだめてくれて、そのおかげかやっと本音を吐き出せた気がして少し気持ちが落ち着いた。しっかり者の長男を演じるのに、少し疲れていたから。

「厳しい状況だけどさ、前向きに考えようよ。お父さんのこと信じて病気のことも一緒にたくさん調べてみよう?まだ治らないって決まったわけじゃないし、最悪そうなるかもしれないって話なんでしょう?」
「あぁ…」
「それに私は修ちゃんの過去があったからこそこの間助かったんだよ。何かが少しでも違ってたら私きっとあのまま襲われて、一生立ち直れなかった…だから私は修ちゃんに本当に感謝してるし、そんな過去を持った修ちゃんが心から好き。だから、そんなに自分を責めないで…?」
「…ははっ、何でお前が泣いてんだよ」
「修ちゃんのお父さんは絶対大丈夫だもん…修ちゃんは1人でなんでも背負いこみすぎ…たまには私のこと頼ってよ…」
「だからこうして呼んだんだろーが。なのに説教されるわ泣かれるわ、散々なんですけど」
「だって……ごめん…」
「でもお前が俺の全部を受け入れてくれるから…ずっと後悔してたあの頃の自分を俺も少しだけ認めてやれそうな気がするよ。ありがとな」
「修ちゃん…」
「だから泣くのは終わり」

涙を掬うと笑顔を見せる名前に唇を重ねる。自分のことのように俺のことを想って涙を流すこいつがすげえ愛しくて、純粋に嬉しかった。

何度も角度を変えて唇を重ね、次第に舌を絡めた熱いものになっていく。ちゅっ…ちゅっ…というリップ音と共にどんどん夢中になっていく。

「ハァ…悪い」

やばい、また止まんなくなるところだった。理性もギリギリのところで唇を離すと名前のほうから唇をまた重ねてきた。

「いいよ。やめないで…?」
「お前俺に気ぃ遣ってんなら別に…」
「そんなんじゃないよ、私も修ちゃんとシたい…」
「………!」

唇を奪うとそのままベッドに押し倒してお互い服を脱がせ合う。別に時間に迫られているというわけでもないのに早く欲しくて少し荒々しく身包みを剥いだ。月明かりに照らされた綺麗すぎる名前の身体にたくさんキスを落とす。

胸を揉み乳首に舌を這わせると「ぁっ…」と恥ずかしそうに反応する名前。もっとその甘い声が聞きたくて音を立てて吸ったり舐めたりを繰り返す。

「あぁっ……ぁっ…ん…」

あーやばい…俺のもかなり反応してる。だって名前の胸がおっきくてえろいし、感じてる名前の表情とか声が可愛すぎる。

そのまま舌を這わせながら下降し太ももの裏を掴むと思いきり脚を広げて割れ目を舌でなぞる。ゆっくり何度も舐め上げるとさっきよりも大きな声で名前が喘ぐ。

「あぁぁっ…修ちゃんそんなとこ…だめっ…」

口をソコにつけて舌を早く動かして責めたり強く吸うと名前はビクビク身体を震わせて達した。

再び乳首を舐めながらナカに指を入れる。ナカはもうぐちゃぐちゃに濡れて熱くなっていて、挿れることを考えると痛いくらい硬くなった。

「…んあっ…あ…んん…」

名前の反応を見ながら指を動かし反応の良い場所を見つけるとそこを執行に責めた。

「ああっ…だめぇっ…!」
「いいぜ、もっかいイけよ…」
「…んんんっ……ああっ」

イッたばかりで息を弾ませる名前の敏感になってるソコに大きくなった俺のを当てがい擦り付ける。

「……ぁ…ん……ぁあっ…」

先端が入ったところで名前の身体を抱きしめて腰を押し進める。あー…きっつ…やべぇ…名前の中あったけー…気持ち良すぎ…

「名前…平気?」
「うん…修ちゃんの、すっごい熱くなってる…」

だからこれ以上煽んなっつーの…。相手がお前なんだ、気持ちが大きい分そうなっちまうのもしょうがねぇだろ…!

腰を打ちつけると名前が首に腕を回してぎゅっと抱きついてくる。パンッパンッと肌がぶつかるたびに耳元で甘く鳴かれて加減も忘れて夢中で名前の奥を突き上げる。今日のことも日頃の疲れも全部忘れるくらい夢中で名前を抱いた。

「あぁあっ…修ちゃ…激しっ…あっ…もう…」
「だめ…まだ足んねぇ…」
「あっ…ああっ…あんっ…修ちゃんっ…やあっ…」



「ん…」


目が覚めるとまだ朝日が昇る前で、多分時間にしたら4時5時くらいだろうか。薄っすら瞼を開ければ視界には裸のまま同じ布団で眠る名前がいた。昨日はちょっと激しくしすぎたかも…と反省しつつも愛しい彼女の寝顔を堪能する。目が覚めたとき隣に好きな子が眠ってんのってなんかいいな…この寝顔見てると穏やかな気持ちになれる。顔にかかる髪を掬うと「んー…」と小さく唸り起きそうになったのでパッと手を離すと、「修ちゃん…寒い…」と身体を寄せてきて頭を俺の胸に埋めてくる。可愛すぎかよ…と内心ときめきながら布団を掛け直して名前の身体を抱きしめると俺も二度寝する。あー…好き…


もう一度目が覚めると外は朝日が昇っていてカーテンを閉めずに寝たことを後悔するくらい眩しい。目をこすると名前はすでに起きていて、「おはよう、修ちゃん」と少し照れ気味の笑顔。一瞬で眠気が吹っ飛ぶくらいキュンとしてる、俺。

「おはよ…」

腕を伸ばし抱き寄せて寝起き早々キスをする。

「身体大丈夫?」
「うん、終わったら疲れて寝ちゃったけどね」
「悪い…ちょっと激しくしすぎた」
「あはは、うん。…でもすごい気持ちよかった」

おいおい、そんなかわいい顔で嬉しいこと言われたら朝からテンション上がっちゃうんですけど。「ごめん、聞こえなかったからもっかい言って」とにやつけば「恥ずかしいからもう言わないっ」と背を向ける名前を後ろから捕まえて抱きしめる。

「えーなんで?ほら言えよ」
「もぉ、ばかぁ!聞こえてたくせに!修ちゃんのいじわる、変態!」

ああ、朝から裸で布団の中でいちゃいちゃ…良い。裸でくっついてるもんだから健全な男子中学生の俺の身体は素直に反応してしまうわけで。抱きしめている手で胸を揉みながら首や背中にキスをする。

「…ゃっ…もう…修ちゃんのえっち…」

布団の中でもぞもぞ動きながらえろいことをしていると突然ガチャッとドアの開く音がして心臓が止まりそうになった。

「……兄ちゃん…?」

立っていたのは親戚んちにいるはずの弟。え、いやなんでいんの?帰ってくんの早すぎねえ??つーかどーすんだこの状況!!!

「ちょ…ちょっと下行って待ってろ、な?」

小学校低学年の弟が見てはいけないものを見てしまったって顔で頷くと部屋を出ていった。あー…やべえ、まじか。

「…ふふっ。見られちゃったね」
「笑いごとじゃねぇって…あーどうしよ…」

本気で焦る俺をよそに名前は笑っている。ったく人の気も知らねぇで…

「悪い、なんか中途半端になっちまって」
「ううん。…まあ、ちょっと残念だけど…仕方ないね」
「………」

可愛く笑う彼女を押し倒したい気持ちをどうにか振り切って急いで服を着る。あーもー…とりあえずおばさんのことしばらく嫌いになりそう。