やろーか
会場にブザーが鳴り響く。
オフィシャル「第1Q終了です」
桐皇 誠凛
25 21
選手たちは休憩のため、それぞれのベンチに帰っていく。
若「ふぃ〜」
今「4点差か…まぁ…こんなもんやろ」
若「つか桃井のデータだけで十分勝てんぜ、あれなら。青峰来ても必要ねーよ!」
余裕を見せる若松に原の一喝が入る。
原「だめですよ、彼は出します。油断禁物なんて当たり前のこと言わせないでください。それに第2Qからはあの二人中心でくるでしょうから」
原は桃井に目線を送る。
桃「…はい、まず間違いなく…」
リ「雪乃ちゃんと火神君を中心に攻めるわよ!」
誠凛ベンチでは、選手たちの前にリコが跪いて指示を出していた。
リ「ぺーぺーが二人いて助かったわ」
火「は?」
リ「情報(データ)ってのは多いほど精度が上がるものよ。日向君達二年生は、一年分研究されているわ。その点、二人はまだ情報が圧倒的に少ないし、雪乃ちゃんは予測困難、火神君は発展途上。桃井のウラをかけるぁ農政があるとしたらあなた達よ」
日「よし、ひとまず頼むぜ、オマエら」
第2Q開始のブザーが鳴る。
日「暴れろ一年生(ルーキー)!」
第2Q開始早々、火神と雪乃は目線を合わせる。
それに気づいた伊月は笑った。
伊「(いーぜ、思いっきり行け!)」
今「……!!(わはは、いきなりかい!)」
伊月からパスをもらった雪乃は、すでにゴール下で飛んでいる火神に向かってパスを出す。
諏「ちっ!(確かにコイツらの情報(データ)は少ない…)」
若「(けどこれは秀徳戦で不発だったやつだろ!)つーか、ついこの間まで中坊だったガキが、バカバカダンクすんなボケェ!!」
諏佐と若松が火神の前にブロックしようと跳ぶ。
観「ブロック二人!!」
しかし若松は違和感を感じる
火神より確かに後に飛んだはずなのに、自分たちは最高到達点を超え徐々に落ちているのにもかかわらず、目の前にいる火神はまだ自分たちより上を飛んでいることに気づいた。
若「……!!(オイコラ…!?テメいつまでそこに…)」
火神は諏佐と若松の二人の上からダンクを決めた。
その時、再び火神の左足に激痛が走る。
若「(この跳躍(ジャンプ)力…実物はマジふざけてやがる!!分かってたのに…)」
今「(止められへんか…!!)参るわ!」
若松と今吉が火神のダンクを決められたことに悔し気にする中、ダンクを決めた火神本人はなぜか仲間にド突かれていた。
日「オマエは!ダンクしかせんのか!」
伊「だがナイスだバカガミ!!」
火「決めたのに!?」
とうとう桃井の表情も曇り始めた。
火「情報(データ)があるだのねーだの、まどろっこしーんだよ!んなもん全部蹴散らして、跳んでやらー」
降「二連続!!」
福「うおおノッてきた火神!いけるぞ!!」
河「いいぞいいぞ火神!!」
誠凛ベンチが盛り上がっている中、火神は左足の激痛に顔をゆがませていた。
それをいち早く気づいたのは…。
原「いや……よくないでしょう」
原だった。
原「だめですよ。いくら若くても、体壊すほどムチャしたら」
リ「……!?(ウソ…!!)」
リコも少し遅れて火神の異変に気付く。
リ「緊急事態だわ。小金井君、至急アップよろしく!」
交代のブザーが鳴る。
オフィシャル「誠凛メンバーチェンジです」
小金「火神!交代!」
火「は!?」
突然告げられた交代に火神は呆気にとられた。
火「ちょっ…なんでオレなんだよ、ですか!これからって時に…」
小金「いーから戻れってば!カントク気づいてるぞー」
火「!」
小金井は火神を落ち着かせるように、肩を軽くたたいた。
観「アイツ交代!?ありえねーだろー」
観「何考えてんだ誠凛ー、やっぱちゃんとした監督いねーとこはダメだなー」
火神の交代に不満を口にする観客たち。
『………(火神君、やっぱり)』
日「(火神…!?まさか…)」
雪乃は先ほどの火神のダンクをした時から、何となくではあったが火神の異変には気づいていた。
リ「痛めた足…完治してないわね?」
降「え…!?」
火「…大丈夫…っすよ!まだ全然…」
リ「病院でも異常なしだったし、別に出るなとは言わないわ!とにかくテーピングするわよ!バッシュ脱いで!」
救急箱からテーピングを取り出すリコの顔は陰っていた。
火神は悔しそうに顔をゆがませる。
火「……(くそっ…!これからって時に…)」
『やろーか』