まかせとけ

控え室を出た青峰を追いかける桃井は、肩のストレッチをしている青峰に駆け寄る。



桃「ほんとにもう…!遅刻なんて信じられない!どーゆーつもり!?相手は(ユキ)ちゃんのいるチームよ!?後半からはちゃんと…」

青「っせーな…わってるよ。これでも反省してんだぜ?ちょっと読み違ったからな。もっと早く来てもよかったわ」



青峰は前半の数十秒のプレイをしてみて、闘志が湧いている様子だった。





誠凛高校控え室―――





日「後半も?確かに青峰いて雪乃抜きはきちーけど…てか行けんのかよ?一試合フルにはミスディレクションは続かないんだろ?」

伊「…オレは反対だな。鷲の目(イーグル・アイ)で見てたけどもうずいぶん効果が落ちてる。一度下がるべきだ」

『できます…いえ、やります』



珍しく引く気がない雪乃。



『どうしても青峰君に、勝ちたいんです』

日「意気込みは買うけどよ(いけんのか…!?)」



雪乃の強い意志は感じ取れた日向だが、それでも懸念をぬぐい切れない日向。



リ「(前半も雪乃ちゃんを外すゆとりはなかった…青峰君が入れば当然さらにキツくなる…かと言って出し続ければ、最後まで保たない…どうする…!?)」




それはリコも同様だった。
火神はそんな雪乃の様子をみて、長い溜息を吐く。



火「カントク、さっきのください」

リ「!?」

火「いーから食ってひっこめよバカ」

『むぐ』



突然火神は、先ほどのリコのレモンの丸ごとはちみつ漬けの一個を手に取ると、それを雪乃の口に入れた。





火「バスケは一人でやるものじゃねーって言ったのオマエだろ!まかせとけ」



雪乃は火神の表情と言葉にようやく折れたようだった。



リ「(どっちを選んでもリスクばかりで答えはない…だったら…ウチのエースの気合を買うか!)…よし、後半雪乃ちゃんは一度下げるわ!第4Qに勝負よ!とは言え、取り返しがつかなくなったらイミがない。危なくなったらいつでも出れるように準備しててね」



リコの言葉に頷く雪乃。



リ「レモンでも食べて」

『え』



しかしレモンを食べるように言うリコに雪乃は顔が引きつった。



リ「むこうはインサイドが特に強いわ。第3Qは土田君入って。水戸部君と二人でゴール下お願い!日向君と伊月君は前半と同じ!9番(キノコ)と4番(メガネ)をマーク。一番の問題は青峰君だけど……対抗できるのはもちろん一人しかいないわ。火神君、まかせたわよ!」

火「うす!」

日「いくぞ誠凛――――ファイ!!」

誠「オォッ!!!!」



会場に向かうため、誠凛は控え室を出た。



『火神君…』

火「あ?ちょっとは頭冷えたかよ?」

『はい、それより私は開花してからの彼の底を見たことがありません。しかも黄瀬君達同様、進化しているはずです。だからこの先の彼は未知数です。気を付けてください』

火「ハッ、望むとこだよ」









その日も私達は今までと同じだった。



今までと同じようにミーティングをして



今までと同じように全員が一丸となって、後半に臨んだ









コートに姿を現した誠凛と桐皇。
黄瀬と緑間は青峰の姿に気づいて、目を見開いた。



緑・黄「!」



タオルを頭から被っている青峰の体からは湯気が出るほど温まっている様子であり、大量の汗が褐色の身体から伝っている。



青「とっととやろーぜ」



青峰の姿に雪乃は静かに見つめる。



日「(体きっちり温まってる。完全にマジモード!!!)」



青峰が本気になったことを感じ取った日向からは冷や汗が出る。



火「よう、アップはすんだかよ?」

青「だから最後まで抗えよ。できればな」









しかし…



この試合をきっかけに誠凛(ウチ)は



今までとは大きく変わることになる―――









オフィシャル「第3Q始めます」









きっと黄瀬君や緑間君の時と同じように、火神君と私ならできると思っていた。



しかしそれがいかに甘かったか、思い知らされる―――





『まかせとけ』完