いーじゃねーか

第2Q残り30秒。
誠凛ボールで伊月の今吉がカットし、運悪く伊月の膝にあたってしまいボールが外に出てしまった。
そこでオフィシャルのブザーが鳴る。



オフィシャル「桐皇学園メンバーチェンジです」



誠凛メンバーは険しい顔つきで桐皇のベンチから出てくる青峰に視線を向ける。



日「(コイツが…青峰大輝…!)」

伊「(カントクみたいな特別な目がなくても…フツーのバスケ部員のオレでも…分かる…)」



水戸部は息をのむ。



火「(アメリカでもここまでのはまだ会ったことねー…雪乃のいた中学最強校のレギュラー、天才5人の一人、『キセキの世代』のエース…!!!)」

小金「(しかも点差つけるどころか10点ビハインド……)」

リ「(最悪のタイミングで来てくれたわね…)」



青峰は誠凛メンバーの視線を感じてはいたが、目もくれずまっすぐに雪乃の元へと歩み寄る。



青「……よう(ユキ)。久しぶりだな。会いたかったぜ…」



すると青峰は雪乃の目の前まで来ると、雪乃の頬に触れた。
その行為に会場中が騒めく。
さらにコート内にいる選手たちは、青峰の表情も見えさらに驚愕した。

青峰の表情は桐皇の選手でも見たことがないほどに優し気な表情をしており、愛おしむように雪乃に熱い視線を送っていた。



『…やめてください、試合中ですよ』



雪乃は青峰のその目から逃げるように視線をそらし、自分の頬に触れている青峰の手を振り払った。
しかしすぐに視線を青峰に戻し、まっすぐ青峰を見つめる。
手を振り払われたことによって、青峰は目を見開くがすぐにハッと笑った。



青「オレと試合をするってんだから、どんな顔するかと思えば……いーじゃん、やる気満々ってツラだな」

『はい、桃井さんと約束しましたから』

青「ははっ、言いたいことは大体分かるけどな…それはプレイで示すことだろ…まあどっちにしろ、勝ってから言えよ」

『はい』



青峰は雪乃の横を通り過ぎ、後ろにいる火神にもすれ違いざま言葉を告げる。



青「できるもんならな」

火「やってやらー、すぐに見せてやる!」





ボールは変わって桐皇ボール。
桐皇の攻撃になった時、今までとはフォーメーションが違うことにいち早く気づいたのは大坪だった。



大「……!これは…」



青峰にボールが渡った瞬間、桐皇の選手が青峰と逆サイドに集まり始める。



観「なんか…バランス悪いってゆーか…やけに片方に人数寄ってない?」

観「違ーよ、ありゃ寄せてんだよ」

黄「アイソレーション!」

緑「使う時の理由はいくつかあるが…この場合は見たままなのだよ。…つまり、両チームのエースの一対一(ワンオンワン)だ」



青峰は笑みを浮かべ、火神は冷や汗を流す。
青峰は股の間をボールを通すと、一瞬のうちにクロスオーバーで火神を抜き去った。
火神は反応できない。



伊「(レッグスルーからクロスオーバー…!速い…!が…そんだけでアッサリ火神をチギるのかよ!?)」

日「ヘルプ!!」



すぐさま日向がヘルプに入るが、青峰は今度はバックロールで日向を抜く。



日「っげ…ぇ(人間ってこんな速く動けるもんなのか!?)」



青峰のスピードについていけない日向は驚愕する。
その間にも青峰はダンクをするため、大きくジャンプをした。



観「おおおお」



ゴールにダンクをぶちかまそうとした時、青峰のボールを火神がブロックした。



青「あん!?(あのロールの一瞬で追いついたのかよ?)」

リ「止めたぁ!!」

小金「よーしゃ火神ィ!!」

黄「(つかあの体制でここまで…!?)高い!!」



こぼれたボールを伊月が拾い、すぐさまゴールへと誠凛メンバーは走る。



若「んなトロい速攻…おととい来やがれボケコラァ!!」



しかしもうすでに若松と諏佐が戻っていた。



降「だめだー、戻り早い。しかも先輩達の動きは読まれてるのに…!!」




ベンチにいる一年生たちが速攻をあきらめかけた瞬間、伊月は雪乃にパスを出し、雪乃は掌底でボールを殴り火神へとパスを出す。






『いーじゃねーか』