だからアイツはヤなんだ
雪乃と木吉は静かに見つめあう。
『木吉さん……ですか?』
雪乃は木吉を不思議そうに見つめる。
木「このー木なんの木♪気になる気〜〜♪」
『?』
突然、某有名なCMを歌いだした木吉に首をかしげる雪乃。
木「の『木』に、大吉の『吉』で木吉だ」
『あ、はい』
沈黙が二人の間に流れる。
木「んで鉄アレイの『鉄』に、平社員の『平』で鉄平だ」
『あ、はい』
再び沈黙が二人の間に流れる。
『あの…何か御用ですか?」
木「ん?あぁ!ねぇよ」
木吉は再びアメを放り投げ、口の中に入れる。
『そうですか(もう2コめ…)』
木「来週で退院すっからちょっくら学校に挨拶に来ただけだよ」
『……ケガか何かですか?』
木「まあな。んで、ついでに体育館覗いてみたら、なんか悩める若者がいたもんだから、ついな。まあキミの悩みなんぞ知ったこっちゃないわけだが」
木吉にイマイチついていけない雪乃。
木「けど期待もしてる。キミは面白い。バスケってのは万能型選手(ジェネラリスト)のスポーツだ。選手一人のプレイの幅は広いほどいい。乱暴な言い方をすればパスを出せる点取り屋(スコアラー)が5人いればオッケー。
まあ実際には人間得手不得手があるから、役割(ポジション)ってもんがあるし、専門型選手(スペシャリスト)は6人目(シックスマン)に置いたりする。が…キミほど極端なスペシャリストは見たことがない。あそこまで徹底して一つのことだけ極めたのは驚異的だ」
そこで清は雪乃にパスをよこすように要求する。
パスを受け取った木吉はシュート体制に入った。
木「けど…そこが限界って自分で決めつけてねぇか?」
木吉はシュートを放った。
木吉のことばに雪乃は目を見開く。
しかしシュートはリングに弾かれてしまう。
木「む」
木吉はシュートが外れてしまい、眉をひそめる。
木「そんだけ自分を客観的に見て、割り切ってプレイしてるのは大したモンだよ。けど、割り切り過ぎかもよ?オレらまだコ―コーセーだぜ。もっと自分の可能性を信じてもいーんじゃねーの」
木吉は雪乃に振り返り、微笑む。
木「とか独り言いってみたりしてな。また来週会おうぜ。雪乃ちゃん」
木吉は体育館の出口へと歩いていく。
『あの…アメ…踏んでます』
木「あぁあ!?さっき買ったばっかなのに」
日向は火神に電話をしていた。
家にいる火神は暗い部屋の中で、床に座っていた。
火≪…はい≫
日「お、火神足は大丈夫か?」
火≪…うす≫
日「つか最近どうした?練習!できなくても顔出せって言ったろ?」
火≪いや…いいっす≫
日「いいっすってなんだそれ!?お誘いしてるわけじゃねえよ!!」
火≪足が治ったら…来週から出るんで。じゃあ…≫
日「あっオイ!!」
火神の机の上には写真立てと、いつも火神が首から下げているリングのネックレスが置いてあった。
火神は日向の止める声も聴かず、一方的に電話を切ってしまう。
日「切れた…」
伊「どうした?」
日「わっかんねーけど…どうしたんだアイツ…?」
伊月は開いていた携帯を閉じる。
伊「まあ来週には来るんだろ?そっとしといてやるのもありじゃないか?あと木吉からメール。来週からくるってよ」
日「…おう」
―――1週間後
火「チワス」
1週間前の電話の通り、火神はようやく練習に出てきた。
伊「おー、火神!足はもういいのか?」
火「ウス」
火神の姿に雪乃も気づく。
日「足はいいけどオマエ!来いよ練習!なんかあったのか?」
火「……すんません」
日「!?」
火神の素直な謝罪に日向は言葉を詰まらせてしまう。
日「いやだから!謝るぐらいならちゃんと…!」
木「ウィース」
リ「あ」
その時、清が体育館に姿を現した。
全員の視線が入り口にいる木吉に向かう。
木「さあ練習しようぜ」
木吉の姿はなんと練習着ではなく、ユニフォームを着ていた
そんな姿に木吉以外のメンバーは、唖然とし言葉が出てこない。
伊・土「え〜と…久しぶりだな、木吉…」
木「オウ!」
日「いや、なんでユニフォームだよ、オマエ!?やる気あんのか?」
木「ひさしぶりの練習でテンション上がっちまってよ」
日「あんのか!」
日向にどやされ、練習着に着替えた木吉。
『だからアイツはヤなんだ』