これが実力だ
木吉の火神に対する1対1の申し出に周りは呆然としていた。
リ「(鉄平…?どーゆーつもり?)」
河「今…なんて?」
降「マジで?」
福「ユニフォームを賭けて…火神と木吉センパイが1対1(ワンオンワン)!?」
降旗たち1年3人組は驚愕の声を上げた。
火「……いいすけど…ブランク相当あるんすよね?手加減とかできねぇすよ」
木「モチロンだ。本気で頼むぜ」
火神はやる気はあるようだ。
日「(一年近くバスケから離れてて火神と勝負なんてムチャだ……けど)」
秀徳高校―――
高「大坪っさーん。誠凛の7番て誰なんすか?」
秀徳高校では練習も終わり、自主練にみんな精を出しているところで高尾が『月間バスケットボール』を手に持ち、大坪に話しかけた。
大「7番?」
高「部室にDVD戻しに行ったら去年の月バスに誠凛の記事見つけて…そしたらなんか一人見慣れない奴がいたんで」
高尾が持っている月バスの記事には、木吉がプレイしている姿が取り上げられていた。
大「…アイツか。去年誠凛のC(センター)だった奴だ。以前、誠凛(あそこ)は4番(日向)と7番(そいつ)の中外二枚看板のチームだった。なぜか決勝リーグにいなかったが…もしいたらトリプルスコアの大敗などなかっただろう
…いや、ウチの負けもあったかもしれん」
大坪の言葉に高尾は目を見開く。
高「(ハァ!?去年て…雪乃と火神いなくてできたばっかの時じゃねーの?)またまた〜どんだけ買ってんすか。なー真ちゃん!って知ってるわけねーかっ!」
高尾は自主練で3Pのシュート練習をしている緑間に話しかけた。
緑「……知っているのだよ」
高「えっ!?」
緑「一度だけ対戦したが覚えている。雪乃はベンチ入り前で知らないだろうが。桐皇対誠凛の時と似ている。圧倒的な差を前にしても雪乃と同じように最後まで諦めなかった」
緑間の言葉に高尾は再び目を見開き体を硬直させた。
高「…ちょっと待てよ。それ…おかしくねーか?結局観に行ってんじゃねーか決勝リーグ!!何が”見たくないのだよ”だよ!!」
緑「…っ家が近かっただけなのだよ」
高「遠いだろ!てか逆だろ、知ってんぞ!」
体育館に高尾の笑い声が響いた。
誠凛高校体育館では木吉対火神の1対1が行われていた。
伊月たちはコートの外で、その戦いを見守っている。
オフェンスの木吉は火神の隙をつき、火神をドリブルで抜いた。
伊・小金「おおっ」
火「(オレよりでかいのに…相当速ぇ!!)」
木吉はレイアップシュートの態勢に入る。
火「(…けど)」
しかしいつの間にか追いついた火神によって、木吉のシュートはブロックされてしまった。
木「むっ…!?(高い…!実際見ると確かにとんでもないジャンプ力だな)」
福「すげぇっ…!!」
降「どっちも譲らない…互角…!?」
日「(やっぱすげぇな木吉…ブランクあんのに火神相手にここまで………)…けど(押してるのはやっぱり…火神だ)」
攻守は代わり今度は火神がボールを持つ。
周りは再び静かになり、二人を見守る。
日「……(けど)…?木吉の動きが…)」
日向はただ一人、木吉の微妙な違和感に気が付いた。
木「フゥ…想像以上にしんどいな」
木吉は大量の汗を手で拭った後、ディフェンスのため腰を落とし集中する。
その瞬間、火神が動き木吉を抜きにかかり始めた。
木「(イカン、反応が遅れた…が)」
火神がダンクをしようとゴール付近でジャンプしたと同時に、ブロックをしようと木吉も跳んだ。
伊「まだだ」
木吉がブロックすると思われたが、火神はボールを空中のままボールを両手に持ち直し、逆方向へと移動してダンクを決めた。
木「何!?」
降「すげぇっっ!!あそこで裏からダンク!?」
河「火神の…勝ちだ!!」
勝負は決し、火神の勝利に1対1は終わった。
火神と木吉は静かに見つめあう。
すると木吉が長く息を吐いた。
木「……ふぃ―――、参った!オレの負けだ。約束通り、スタメンはキミだ」
木吉は火神の方に手を置く。
火「…ウス」
火神は特に喜ぶわけでもない。
リ「ちょっと…」
火「…じゃあオレ先に上がります」
火神は体育館を去っていった。
『これが実力だ』