始めるわよ
やっと砂浜でのメニューを終えたころには、空は赤く染まっていた。
リ「おつかれ!夕方からは体育館に移動よ!」
日「お、おおう…ぷっ」
しかしすでにみんなは吐きそうなのを必死に堪えていた。
体育館―――
小金「…っおお!?」
福「動きやっすっ!!!」
降「バッシュってすげぇな!」
小金「今ならいつもの倍速で動ける気がする!」
体育館で走ってみると、砂浜とは大きく違い動きやすさにそれぞれ感動を覚えていた。
日「ぶっちゃけカン違いだけどな」
木「まあ確かに半日でいきなり筋力がアップしたりはないな」
そして体育館での練習が始まった。
日向は3Pシュートをするために膝を落とす。
その時に足元に違和感を感じた。
日「…!?」
3Pシュートは綺麗に決まる。
日「(どうなってる…!?いつもよりずっといいカンジで指がかかる…!!)」
それは日向だけではなかった。
伊「(…え!?なんかいつもと違う…楽?いや…足…か?バタつかないっていうか…)」
木「(カン違いじゃねーな…わずかだが確実に動きがよくなってる。なるほど。人間が地面を蹴るし時に一番重要な親指のつけ根に前より力が集約されるようになったからだ。砂浜練習の本当の目的は筋力アップ以上にこれか…これで毎日砂浜→体育館の練習を繰り返せば…
一人一人の動きの質(クオリティ)は確実に向上する!思った以上に考えられてる…さすがだな)」
火神はボールを持ち、ゴール下でいつものように跳んだ。
しかし火神はダンクではなく、レイアップシュートにする。
小金「火神、今のはダンクいけよフツーに!」
降「タイミング合わなかったのか?」
火「………」
日「(むしろピッタリだったんじゃねぇのか…?まさか…跳びすぎにためらった!?)」
練習が終わり、民宿へと戻ってきた誠凛メンバー。
一年生達は部屋で2人1組でペアを組み、ストレッチを行っていた。
伊「ストレッチは入念にやっとけよ。明日に響くぞ」
一「ウィース」
雪乃は火神とペアを組み、雪乃はどこか上の空で容赦なく火神の背中を押していた。
火「いてっいててっ。強ぇよバカ!オイ!」
『あ、すいません』
火「っのやろ、考えごとかよ!?」
『…はい』
火「新しいスタイルのことか?」
『少し…あせっています。まだ手がかり一つ掴めてません』
リコは風呂から上がり、自分の部屋へと向かう。
木「リコ〜〜〜日向見なかった?」
リ「わぁっっ」
突然震え声で名前を呼ばれ、リコは振り向くとそこにいたのはマッサージ機に座る木吉の姿があった。
リ「日向君ならさっきボール持って表言ったわよ」
木「ホントか!?そーゆートコマジ敵わねーなあいつには。しまったこーしちゃおれん!オレも行こ」
木吉はマッサージ機を止め、日向の後を追おうと立ち上がった。
リ「ちょい待ちっ」
木「?なんだよ?」
しかしリコに額を押され、もう一度マッサージ機に座ることになる。
リ「この合宿…どう思う?」
木「どうって…なんか不満でもあるのか?」
リ「そう…じゃないケド…」
木「…んー」
木吉はもう一度マッサージ機を起動させながら考える。
木吉「あるっちゃある。ないっちゃない」
リ「何よそれ?」
木「リコのやってることは正しいよ。今の練習で全員の基本性能(スペック)は確実に上がる。問題があるとしたらオレら選手の方だ。もし、よりチームのレベルを上げるため必要なものがあるとすれば…
自分の役割を知ること。スタイルの確率と言ってもいい。仮に何か新技を身につけようとしてもそれは自分のことを知ってからだ。だが雪乃はもちろん、二年生もまだそれが不完全だ。つってもこれは人に言われてすることやねー。自分で見つけるしかない」
リコは木吉の言葉を聞いていてふと疑問に思った。
リ「………なんで自分でバスケ部創ったのに主将(キャプテン)やらなかったの?」
木「え?」
リ「なんでも知ってる風がムカつく!」
木「ええー」
リ「日向君に文句はないけど鉄平も向いてるわ、やっぱり」
木「日向(アイツ)の方が適任だからそうしただけさ。リコが押して日向が引っ張る。それが誠凛にとってベストだよ。だからオレは日向に頼んだ」
リコはため息を一つ零す。
リ「放し戻すわ。とにかく今のままじゃダメってことね?」
木「まあ…そーだなー。せめて何かきっかけでもあるとなー」
そのころ外では民宿の女将さんと従業員が外で話をしていた。
女将「ちょっとちょっと。明日のお客さんの札、まだ出てないよ」
従業員「あ、すいません!」
外の札の誠凛高校のの隣に立てかけられた札には『秀徳高校男子バスケットボール部様』と書かれていた。
翌日―――
高「げぇっボロー…」
大「高尾うるさいぞ」
『始めるわよ』完