人事を尽くして天命を待つ

会場は静まり返っていた。



誠凛  海常
100―98



観「うわぁああああ!!」

観「誠凛が勝ったぁああ!!」



会場はどよめきが起こっていた。



日「うれしい通り越して信じられねー」



誠凛ベンチは喜びにあふれ、コート内のメンバーはほっとしていた。



火「うぉっ…しゃあぁあ!!」

『………』



火神は喜びに叫び、雪乃はフラつきながらも小さく微笑んでいた。

一方海常のメンバーは信じられないという顔をしている。
黄瀬は茫然と立ち尽くしていた。



黄「負け…たんスか?(生まれて…初めて…負…)」



黄瀬は静かに一粒の涙を流した。



黄「あれ?あれ?」



次々と涙は流れ、黄瀬は慌てて涙を拭おうとするが、止めどなく溢れてくる。




観「黄瀬ないてねぇ?」

観「いや悔しいのは分かっけど…練習試合だろ。たかが…」

火「………」

『(黄瀬君…)』



雪乃と火神は黄瀬をじっと見ている。



笠「っのボケ、メソメソしてんじゃねーよ!!」

黄「いでっ」

笠「つーか今まで負けたことねーって方がナメてんだよ!!シバくぞ!!」



泣いている黄瀬に笠松は容赦なく足蹴りにする。



笠「そのスッカスカの辞書にちゃんと『リベンジ』とって単語追加しとけ!」



選手全員はセンターサークルに集まる。



審「整列!!100対98で誠凛高校の勝ち!!」

全「ありがとうございました!!!」





練習試合が終了し、体育館の外に帰る誠凛高校と見送りに出ている海常高校の姿があった。
両チームの監督の表情は真逆だった。

リコは晴れ晴れとしているが、武内の顔は沈んでいた。



笠「地区違うから次やるとしたら…I・H本番スね」

日「絶対行きます。全裸で告るのやだし」

笠「?」



両チームのキャプテンは握手をした。



森「雪乃ちゃんはいますか?」



会場の森山は伊月に話しかける。



伊「雪乃ですか?」

『あの…私に何か用ですか?」

全「うおおお!!」



また気づかなかった全員は雪乃に驚く。



森「雪乃ちゃんって呼んでいいかな?」

『はい、そちらの方が呼びなれているので…』

森「もしよかったら…メアド交換しない?」

全「なっ!?」



森山の言葉に全員は驚愕した。



笠「おい!森山!!」

小「さすがに今日会ったばっかりなのに、お前それはないだろ」

『いいですよ』

全「いいの!?」



雪乃の言葉に全員はまた驚愕した。
雪乃はスタメン全員とメアド交換するのは大変なので、黄瀬に聞くように言った。



森「黄瀬は?」

小「どうしても顔見せらんないって謝ってどっか行った」

森「ったく…」

全「ありがとうございました!!」









黄瀬は水飲み場におり、頭から水をかぶっていた。
しばらく浴びた後、蛇口を締め顔を上げる。
その顔は浮かれない表情だった。



?「オマエの双子座は今日の運勢雑賀宇だったのだが…まさか負けるとは思わなかったのだよ」



そんな黄瀬に誰かが話しかけてきた。


黄「…見にきてたんスか」



話しかけてきた人物に黄瀬は目を見開いた。



?「まあ…どちらが勝っても不快な試合(ゲーム)だったが」



その人物は緑髪に眼鏡をかけており、左手の指にはテーピングを巻いている。
海常高校にむかっていたリアカーに乗っていた人物だった。



秀徳高校バスケ部 SG
195cm 79kg
緑間 真太郎



緑「サルでもできるダンクの応酬。運命に選ばれるはずもない」




『人事を尽くして天命を待つ』