人事を尽くして天命を待つ

黄「帝光以来っスね。つか別にダンクでもなんでもいーじゃないスか、入れば」



黄瀬は唇をとんがらせる。



緑「だからオマエはダメなのだよ。近くからは入れて当然。シュートはより遠くから決めてこそ価値があるのだ」



緑間はタオルを黄瀬に投げ渡した。



緑「『人事を尽くして天命を待つ』という言葉を習わなかったか?まず最善の努力。そこから初めて運命に選ばれる資格を得るのだよ。オレは人事を尽くしている。
そしておは朝占いのラッキーアイテムは必ず身につけている。だからオレのシュートは落ちん!!」



緑間の左手にはカエルの玩具が握られている。



黄「(毎回思うんスけど…最後のイミが分からん!!これが『キセキの世代』NO1シューター…)…つーかオレより雪乃っちと話さなくていいんスか?」

緑「必要ない。B型のオレとA型の雪乃は相性が最悪なのだよ」



眉をひそめながら緑間は言う。



緑「アイツのスタイルは認めているし、むしろ尊敬すらしている。だが誠凛などと無名の新設校に行ったのは頂けない。オレのいる秀徳高校に来ればよかったものの…
学校選びも尽くせる人事なのに、あんな学校で勝とうとしているのが、運命は自ら切り拓くとでも言いたげで気にくわん」

黄「(本当は雪乃っちと一緒の学校になれなくて悔しいくせに、素直じゃないスね。こんなこと言うと怒られるんで言わないっスけど)」



心の中では黄瀬は呆れていた。



緑「ただ…地区予選であたるので気まぐれで来てみたが、正直話にならないな」

?「テメー渋滞で捕まったら一人で先に行きやがって…なんか超ハズかしかっただろがー!!」



その時、緑間と一緒に来ていた男子生徒がリアカーを引きながら現れた。



緑「まあ今日は試合を見にきただけだ。…だが先に謝っておくよ。秀徳高校(オレたち)が誠凛に負けるという運命はありえない。残念だがリベンジは諦めた方がいい」



黄瀬は緑間の言葉に黙っていた。





海常高校からの帰り、近くにある佐々木総合病院で雪乃のケガの具合を見てもらった。
ケガも軽く、包帯を巻き直してもらって終了した。



小金「雪乃も異常なし…何はともあれ、っしゃー!!勝ったー!!」



帰り道、小金井は嬉しさのあまり叫んだ。



小金「帰りどっか食べてこうぜ!!何する」

日「安いもんで。オレ金ね…」

火「オレも」

『私も』

リ「…ちょいマチ。今全員の所持金、交通費抜いていくら?」



リコの手に乗ったお金は二十一円しかなかった。



日「帰ろっか…」

小金「うん…」



皆諦めかかっていたとき、リコが何かを発見した。



リ「大丈夫!むしろガッツリいこーか!肉!!」

全「……?」



リコの案内でステーキ店に入り、テーブルについた全員の前にはとんでもない厚さのステーキが置かれた。
店内の張り紙には『超ボリューム!!4kgスーパー盛盛ステーキ。30分以内に食べきれたら無料。※失敗したら全額自腹一万円』と書かれていた。
ステーキを前にしたメンバーは顔を青ざめた。



リ「遠慮せずにいっちゃって!」

全「ガッツリいきすぎじゃねぇ!!?」

日「えっ…ちょマジ…?これ食えなかったらどーすんの!?」



日向は恐る恐るリコに尋ねる。



リ「え?ちょっとー…なんのために毎日走りこみしてると思ってんの!?」

全「(バスケだよ!!)」



全員は心の中で突っ込む。



日「やべー、こーゆーヤツだと分かってたはずなのに…」



日向は味わう暇もなく次々と肉を口に入れていく。



伊「このステーキ…ステキ」

日「ゴメン、そーゆーの今マジウザイ!!」

水「………」

小金「水戸部、起きろー」



水戸部は倒れそうになった。



『…すいません、ギブです』

全「雪乃―――!!」



雪乃が食べたのは肉のほんの一切れだった。



全「(死んだ……!!)」



全員が終わったと思った。



火「うめー、つかおかわりありかな?あれ?いんないんだったらもらっていい?ですか?」

日「(リスみたいに食っとる!!)」



火神は平気な顔で口いっぱいに肉は頬張っていた。



全「(火神、ありがとぉー)」



雪乃はお腹が苦しくて店の外へと出た。
そこで気づいた。



『……!黄瀬君…』

黄「…雪乃っち。…ちょうどよかった。ちょっと話さねぇスか」



そこにいたのは帰りなのか、制服を着た黄瀬がいた。





『人事を尽くして天命を待つ』完