おまえのバスケ

黄「ちょっと…話さねぇスか…雪乃っち」

『……?』









火「うん…さすがに食いすぎた…」

リ「ごちそうさまでしたー!!」



結局全員分のステーキを食べた火神はお腹がとても大きく膨らみ少し苦しそうだ。
大赤字の店主は涙を流していた。



リ「じゃ、帰ろっか!全員いる?」

日「…あれ?雪乃は?」

小金「いつものことだろー、どうせまた最後尾とかに…」



火神はあたりを見渡した。



火「いや…マジでいねぇ…ですよ」



全「…え?」









そのころ、雪乃と黄瀬は近くの公園に来ていた。
隣にはバスケットコートがある。



黄「…てかこうしてちゃんと話すのも久しぶりっスね。ケガ大丈夫スか?」

『…はい。大丈夫です』



黄瀬は眉を下げながら雪乃の包帯が巻かれている頭に優しく触れる。
そんな黄瀬に雪乃は優しく笑いかけ、黄瀬の頬を手で包み込んだ。
黄瀬の顔は真っ赤に染まる。



『本当に大丈夫ですから、そんな顔しないでください』

黄「(あぁー、キスしてー。天然なんスから)わかったっス」



雪乃が離れると、黄瀬は落ちていたバスケットボールを持つとベンチの背もたれの部分に腰かけた。



黄「そういえば、緑間っちに会ったっスよ」

『……!正直あの人はちょっと苦手です』

黄「けどあの左手はハンパねースよ、ジッサイ。かに座がいい日は特に」

『…はい」



黄瀬の真剣な顔に雪乃も真剣な顔になる。



黄「ま、今日は見にきただけらしースわ。それより…雪乃っちにフラれ試合も負けて、高校生活いきなりふんだりけったりスわー」



黄瀬は空を見上げた。



黄「ダメ元でも一応マジだったんスよー」

『ひっくり返りますよ』



黄瀬は頭にボールを乗せ、足を浮かせ体を揺らす。
ベンチの背もたれの部分に腰かけているため、危なっかしい。



『……すいません』

黄「……冗談スよっ。そんなことより話したかったのは、理由を聞きたかったんスよ。なんで…全中の決勝が終わった途端、姿を消したんスか?」



黄瀬は雪乃にボールを投げ渡した。





日「雪乃ー、アイツ今日ケータイ忘れたのか?てかすぐフラフラどっか消えるって…子犬か!」



日向達は雪乃を探して歩き回っていた。



リ「それより早く見つけましょ!逆エビの刑はそれからかな!

日「………:」



リコがキレているのを見て、日向は冷や汗をかく。。



火「…ったく」



ため息を吐いた火神は、ふと横をみるとバスケットコートがあった。
コートの中では数人の男子がバスケをしている。



火「(おっ、ストリートか。日本じゃ久しぶりに見るなー)」



コートの向こう側では黄瀬と雪乃が話しているところを火神が見つけた。



火「!」









『………わかりません』

黄「へ?」



雪乃の答えに黄瀬は拍子抜けした。



『帝光の方針に疑問を感じたの確かに決勝戦が原因です。あの時私は何かが欠如していると思った』

黄「スポーツなんて勝ってなんぼじゃないスか!それより大切なことなんてあるんスか!?」

『私もこの前までそう思ってました。だから何がいけないかはまだハッキリ分からないです…ただ、私はあのころバスケが嫌いだった』



そういう雪乃の表情は暗かった。



『ボールの感触。バッシュのスキール音。ネットをくぐる音。ただ好きで始めたバスケなのに。だから火神君に会ってホントにすごいと思いました。
心の底からバスケットが好きで、ちょっと怖い顔やクサった時もあったみたいだけど、全部人一倍バスケに対して真剣だからだと思います(昔のあの人みたいに…)』

黄「…やっぱ分かんねっスわ」



黄瀬は笑った。





『おまえのバスケ』