買ってきてv

誠凛の購買は外にあり、一年は走って向かっていた。
購買につながる扉に着くと、外には人だかりができている。



火「やっぱいつもより人多いみてーだな……!!」



扉を開けて購買に来てみると驚愕した。



火「パン買うだけって…マジかよ?ほとんど全校生徒いねぇ!?」



購買の前にはちょっとどころじゃなく、50人以上の人だかりができていた。



男「おばちゃんイベリコ豚カツサ…」

男「いてっ!!」

男「すいませんイベ…ってーな」

男「何すんだ…いって」

女「ちょっとおさないでよ」

男「イベ…あー!!」



人だかりの中は我先にと皆押し合っていた。



福「カ…カオスだ」



人だかりには隙間がないぐらいごった返している。



火「とにかく行くしかねー。筋トレフットワークの3倍は…死ぬ!!」



しかしこの人ごみに突っ込むのは躊躇う。



河「よし…まずはオレが行く…火神ほどじゃねーが、パワーには自信があるぜ」



そのとき、川原が名乗りを上げた。



河「うおおおおおおおお」



雄叫びを上げながら人ごみに突っ込むが、すぐに跳ね返されてしまった。



一「歯ァ立たなすぎだろっっっ!!!」

福「ってゆーかよく見たらこれ…ハンパな力じゃムリだぞ…」



福田は冷や汗を流しながら気づいた。



福「ラグビー部のフォワード、アメフトのライン組、すもうにウェイトリフティング。奴らのブロックをかいくぐるのかよ…」



人だかりの中には大勢のガタイのいい男子生徒がいる。



火「おもしれぇ…やってやろーじゃん」

河「火神!」

火「おおお!!!」



火神は人ごみの中に突っ込み、なんとか進もうとするが、すぐに跳ね返されてしまった。



火「(これが日本の混雑(ラッシュ)…!!)」

降・福・河「火神ィィイイ!!?」

降「やっぱ全員で行くしかねぇ!!」

一「誠凛ーファイ!!オオ!!」



その後も火神、降旗、福田、河原の4人はなんとかして進もうとするが、購買にはたどり着けなかった。



火「(んのヤロ……!!)」

降・福・河「(ハンパねぇー!!)」



4人は愕然とする。



『あの…買えましたけど……』



そのとき雪乃が現れ、その手には幻のパンが握られていた。
しかも二つも。
火神たちは愕然とした。




「なっ…オマ…どうやって!!」



火神は雪乃の胸倉をつかんだ。



『人込みに流されてたら、先頭に出ちゃったんで、パンとってお金置いてきました』

降「ちょっ、二つも買ってきたのか?お金は?」

『もう一つは…貰いました』

全「貰ったぁ!?」





回想―――



無事にパンを買い終わった雪乃は火神たちの方へ向かおうとした。



『(何とか買えましたね)』



そのとき、雪乃に誰かがぶつかった。



『!!』

?「いってぇー、誰?ってあっ」



雪乃にぶつかってきた男子生徒は辺りを見渡した後、雪乃を見つけた。
その瞬間、顔が赤くなり、何故か慌て始める。



『?大丈夫ですか?』

男「あっ!大丈夫…です//あの…よかったらこれ…」


男子生徒が顔を赤くしながら持っていた幻のパンを雪乃に差し出した。



『え?でも私もう買いま…』

男「ぶつかったお詫びとしてだから…じゃ!!」

『あ…』



そう言って、男子生徒は雪乃にパンを渡した後、走り去っていった。



回想終了―――





雪乃から話を聞き、火神達は茫然としていた。
雪乃は火神の手に二つのパンを置いた。



降「なぁ、知ってるか?『幻の美女』の噂」

福「あぁ…誰も名前も知らないし、たまにしか見ないというとてつもない美女なんだろ?」

河「確か見たやつの証言によると水色の髪をしていたというけど…」

降・福・河「…まさか!」

『?どうしたんですか?』

福「いや…なんでもねーよ」

河「さすが幻の6人目はちげーな…」





『買ってきてv』