ちょっと見せてもらおうぜ
秀徳高校―――
時刻は夕方。
緑「DVD?」
秀徳高校も今日は試合がなく、緑間は高尾と一緒に廊下を歩いていた。
高「昨日、撮影部隊が撮ってきた正邦のな。オレらだけ一年レギュラーで何も知んねーからなー」
高尾の手にはDVDが握られている。
緑「興味ないのだよ」
高「雪乃と火神(アイツら)いないからってそーゆーこと言うなって!決勝はこっちが本命なんだからさ。今日オフだし帰ってもヒマだろ?」
緑「いや…」
高「決まり!」
緑「オイ」
同時刻、火神はバスケ部の部室に来た。
火「しまった、タオル忘れた」
火神は自分のロッカーを開け、タオルを出しロッカーを閉めると、雪乃がいた。
火「なにしてんだ、いつからテメー!?」
『忘れものです。いつからというと今女子更衣室から出てきました』
火「音立てろよ、怖−から!!(気ィ抜くとやっぱ全然気がつかねー…)」
久しぶりに雪乃の影の薄さを実感した火神は冷や汗をかいた。
『それよりアレ…カントクの忘れ物ですよね』
火「?」
雪乃が指さした先には『正邦VS北和田 予選5回戦』と書かれているDVDがあった。
『次の相手ですよね』
火「そーいやカントクが友達に撮影頼んでたな。つかちょうどいいや、ちょっと見せてもらおうぜ」
火神と雪乃は部室にあるDVDデッキに差し込んだ。
同じく秀徳高校では、緑間と高尾も正邦のDVDを見ていた。
正邦VS北和田の試合は正邦が圧倒していた。
特に9番が目立っている。
正邦 北和田
39― 8
緑「なるほどな確かに王者と名乗るだけはある。DFは特に固いな。ただ…」
火「こいつらの動きなんか変…つーか(リズムが違う……!?なんだこの違和感…)」
場所は違えど、火神と緑間は同じ違和感を感じていた。
高「忘れちまったけど、なんか…この学校の練習は特殊なんだと。どーやってっかわかんねーけど機動力がやけに高い。DFなら東京最強だとさ」
火神は9番のDFに注目した。
火「…っと、この坊主頭のDF特にしつこいな」
『この人…知ってます』
火「あ?」
『中学時代、対戦したことあります。当時はまだ初めて間もないとはいえ、黄瀬君を止めた人です』
火「……!?」
『あと、なぜか告白されました』
火「はぁ!?」
〜回想〜
審「24秒オーバータイム!」
黄「ありっ!?」
雪乃が帝光中学3年生の時。
黄瀬は坊主頭の現正邦の9番のせいで攻めきれず、24秒を取られてしまい驚いていた。
?「黄瀬、てめぇ〜持ちすぎだバカ!」
黄「スマッセーン」
緑「だからオマエはダメなのだ」
『黄瀬君…ちゃんとボール回して下さい』
黄「あうっ、雪乃っちも怒ってるっっ!?(つかその顔可愛すぎ)」
メンバーに怒られる黄瀬は涙を流していた。
いつもは温厚な雪乃も睨んでいた。
しかし身長が高い黄瀬には、上目遣いになっている。
?「黄瀬ぇ、オマエだけだぞ。オレら5人の中でノルマの20点取ってねぇのは」
黄「スマセンッス、キャプテン!」
主将にも怒られ、DFをにらみつけた。
黄「名前は!?アンタのせいでオレだけ今日ヤキ入れられるっスよもー!!」
津「津川智紀だ。そうかヤキ入れられんのか。楽しいなぁー。人の嫌がる顔はホント楽しい!」
津川は心底嬉しそうに笑っていた。
黄「誰かマーク変わってほしーんスけど!」
黄瀬は嘆いていた。
結局黄瀬以外のキセキの世代が点を取り、試合は圧勝で終わった。
落ち込んでいる津川は雪乃にぶつかった。
雪乃を見つけると津川の顔はどんどん赤くなっていく。
『?大丈夫ですか?』
顔を赤くしたまま固まっている津川に雪乃は心配そうに顔を覗き込む。
すると津川は突然、雪乃の肩をつかんだ。
『え?』
津「す…」
『す?』
津「好きです!付き合ってください!」
全「なっ!?」
津「一目惚れしたんだ!」
突然の津川の申し出に『キセキの世代』は呆気にとられた。
雪乃も目を見開いた。
『あ、あの』
?「オイ」
その時、『キセキの世代』の一人が雪乃の肩に乗っている津川の手を払いのけて、後ろから雪乃を抱きしめた。
?「こいつは俺んだ。手を出すんじゃねぇ」
『っ』
津「彼氏!?」
津川がショックを受けている間に雪乃は彼氏と名乗るに連れていかれる。
だが雪乃の表情は暗かった。
〜回想終了〜
『ちょっと見せてもらおうぜ』