大丈夫です
リ「正邦は古武術を使うのよ」
ベンチに戻ってきてそうそうリコが言った。
火「古武術…!?」
古武術と聞いた火神は跳び蹴りしている姿を思い出した。0
リ「蹴らないしそれ古武術チガウ!じゃなくて正確に言うと『古武術の動き』を取り入れてるの。その技術の一つに『ナンパ走り』っていうのがあるわ。普通は手足を交互に振って走るけど、ナンパ走りは同じ側の手足を振って走る」
笠「『ねじらない』ことで体の負担が減って、エネルギーロスを減らせるらしい」
笠松はリコがしていた説明を黄瀬にもする。
笠「よく知ってるっスね」
笠「全国でも珍しいチームだからな。月バスで特集された時もあったし」
黄瀬は考え込んだ。
黄「(なるほど、だからっスか。あの津川…去年よりもさらにDFの圧力が強くなってる)けどこのままやられっぱなしで黙ってるようなタマじゃないスよね?」
黄瀬は誠凛ベンチを見ながらそう言った。
リ「ナンパ走りの他にもふんばらずに力を出したり、タメを作らず速く動いたり、いろんな基本動作を古武術に応用してる。それが正邦の強さなのよ」
火「(古武術の動き…あの違和感はそーゆーことか)」
リ「けど消えたり跳んだりするわけじゃないわ。相手は同じ高校生よ。フェイクにもかかるし、不意をつかれればバランスも崩れる。
やってるのは同じバスケットよ。いつも通りやればちゃんと通用するわ。まだテンパるとこじゃないわよ!」
リコにそう言われ、誠凛はコートに戻っていく。
火「伊月センパイ…ボール回してもらえないすか?」
伊「え?」
コートに戻る途中、火神は伊月に話しかけた。
火「もっかい津川(アイツ)とやらせてください」
伊「…じゃいいか?任せて。なんか秘策あり?」
火「いや…けど、とどのつまり同じ人間すよね?相手より速く…ぶち抜きゃいいんだよ…です」
火神は肩を回しながら戻っていった。
伊「うおお〜なんだソレ。大丈夫か?」
『たぶん大丈夫です』
心配そうな伊月に雪乃が話しかける。
『やる時はやる人です』
誠凛のオフェンス。
火神にボールが渡った。
津「お、1オン1?来いっ!」
火神と津川が対峙する。
火「古武術だろーがなんだろーが知るか。バスケはバスケだろ!」
すると火神は右にドライブする。
しかし津川もすかさずコースに回り込むが、その瞬間ドリブルを切り返してスピードを緩めた。
津川は急なスピードの変化に対応できず、体がよろめいた。
津「むぐっ…(切り返してチェンジオブペース…!?)」
その隙に火神は津川を抜き去った。
津「はっやっ…!!?」
火神はそのままシュートを決めた。
観「おおお、マジか今!?」
観「はえぇー電光石火!!!」
火神のプレイに会場が沸く。
春「へえぇ…初めて見たぞ、オマエが抜かれるトコ」
春日が驚いた様子で津川に話しかけた。
津「……ははは。いやこれからですよ〜楽しくて苦しいのは!」
津川は不気味に笑っていた。
『大丈夫です』完