心配すんな
誠凛 正邦
19−19
第1Qが終わり、それぞれの選手たちはベンチに戻った。
津「どーてん……」
津川はスコアを見て呆然とする。
津「ビミョ〜つかありえねェ〜全然目標達成できてなくね?」
津川はえええええと言いながら立ち上がる。
岩「津川!調子に乗るな。だまれ」
岩村は津川を睨む。
津「ごめんなさい!じゃなくてスイマセン!」
津川は岩村の怖さにビビりながら大人しく座った。
岩「…もしこの中に今の津川と同じようなことを少しでも思ってる奴らがいたら、改めて肝に命じろ。誠凛(アイツら)は強い。格下などと間違っても思うな」
?「うんうん、岩村はちゃんとわかってるね。油断は禁物。慢心など10年早い」
岩村の言葉に賛同したのは正邦高校監督の松元侑憲だった。
松「ましてお互い同じ高校生。勝負は終わるまで何が起こるかわからん。毛ほどもスキを作るな。まだ勝負は」
リ「始まったばかりよ!」
そのころ、誠凛ベンチでもリコが同じことを言う。
リ「陣型(フォーメーション)は攻守共このまま行くわ!ただパス回しにつられすぎてるから、ゾーンも少しタイトに。あと火神ファウル多い!」
火「う…」
リ「相手に合わせようなんて腰が引けちゃ流れ持ってかれるわ。攻める気持ちが大事よ!!」
全「おう!!」
ブザーが鳴った。
オフィシャル「第2Q始めます」
日「っし!」
リ「日向君」
コートに戻ろうとする日向をリコが止めた。
リ「…いいのね?」
日「おー」
第2Qが始まった。
観「………!!!」
観「うっおっ…」
まずは誠凛のオフェンス。
しかし正邦のディフェンスは第1Qよりもビッタリとくっついていた。
観「すっげぇ!!一段と厳しい!!」
観「いよいよ東京最強のDF全開か!」
リ「来た…!!」
黄「すっげー…圧力(プレッシャー)…!」
正邦のディフェンスに観客やベンチが圧倒される。
津「もうさっきみたいに抜かせないからね!」
火「(のやろっ…マジでコイツ…抜けねぇ…!)」
パスをもらってドリブルをする火神だが、津川を抜けない。
火「(けど)」
その時、雪乃が動いた。
火「(二人だったら)」
火神は津川の後ろにいた雪乃にパスを出し、ゴール下に走りこむ。
雪乃もタップパスで火神にリターンパスをした。
津「(何が起き……)ええ!?」
岩「させん!」
しかし火神の前には岩村が立ちはだかった。
河「ヘルプ早ぇ!!」
しかし再び、火神は雪乃にパスをだし、雪乃は今度は床にボールをたたきつけ、高くボールを上げた。
そのまま火神はダンクを決める。
観「うおおお、なんだ今のは!?」
二人のプレーに会場が沸く。
津「(あんな連携プレーもあんのかよー!?てか11番(雪乃)どっから出てきた!!?ホケツじゃねーの!?けど…)」
8「津川と岩村(キャプテン)を二人抜きだと…」
正邦の選手は驚愕していた。
黄「前より二人の息が合ってるっスね」
黄瀬は前髪を掻き上げながら言う。
笠「あのDFをぶちやぶるかよ。けど…一つ気になるな。第2Qでかく汗の量じゃねーぞ、あれは…」
笠松が言っていたのは火神の汗の量。
火神はほかの誰よりも汗を掻いており、息も上がっていた。
津川は不気味に笑っている。
春「なーに抜かれて笑ってんの〜?」
津「あっすいません!」
春「いーけどさー〜別にー〜」
春日は津川の肩を組んで話しかけた。
春「10番(火神)のオーバーペースだろ?うれしいのは〜いいカンジにオマエのマークが効いてんじゃん」
津「まだまだ!もっと苦しんでくれないと!!」
春「おお〜なんと頼もしいドSぷり」
津川は嬉しそうな表情で拳を握りしめる。
津「それに、確かにあの二人(火神と雪乃)の攻撃力はスゲーけど、点を取れるのは一人だけでしょ?」
誠凛のオフェンス。
火神が津川に背を向けてボールをもらった。
しかし津川はプレッシャーをかけてこずに、少し離れてディフェンスをしている。
火「!?(なんだ急に…全然プレッシャーかけてこねー…止める気もねーのか?何考えてよーが知るか!上からぶちこんでやる!!)」
『!!(いけない!罠です!!)ダメです、火神君!!』
日「(……!!)だめだ行くな火神!!」
津川の考えにいち早く気付いた雪乃と日向が止めるが、遅かった。
火神はターンをしてシュート体制に入ったが、津川がわざとぶつかり倒れこんだ。
その瞬間、審判の笛が鳴る。
『心配すんな』