勝つために

春「先輩の意地ね〜…は〜ん。いいね〜好きだわ〜そーゆーの」

津「先輩ってもオレと一つ違うだけじゃーんっ」

8「オマエはもうマジ黙っとけ」



津川は日向を指さしながら言うと、後ろから正邦の8番の選手に叩かれた。



岩「……受けて立とう。来い!!」

日「んじゃ遠慮なく」



日「行くぞ、正邦!!」









誠凛 正邦
30−31



火神は眉を顰めながらベンチでコートを見つめていた。



リ「何を深刻な顔をしてんの!みんなそんなヤワじゃないから大丈夫よ!」



そんな火神をリコが軽く殴った。



リ「余計な心配しないで声出しなさい!」

火「……ウス!」



その時、小金井が正邦の8番に抜かれてしまった。



8「もらった!!」



そのままレイアップシュートの態勢に入る。



降「ああー」

日「さすかっっ」

8「むっ…」



しかし日向がシュートをブロックして、誠凛にボールが渡った。



観「おぉスゲェ!!止めたぁ!!」



伊月がゴール下にいる水戸部にパスを出す。
岩村に背を向けている水戸部は、ターンをして半身になり岩村の方とは逆の手でボールを持ってジャンプした。



岩「……!!(このフォームは…コイツまさか…フックシューターか!!)」



水戸部はフックシュートを決めた。


岩「(去年にはなかった…小癪な技を覚えたな)一年間遊んでたわけではなさそうだな」



岩村の言葉に水戸部は静かに頷いた。





攻守交替で正邦のオフェンス。



春「なんの〜まだまだ」



春日はゴールから離れたところからレイアップシュートを打ち、決めた。



伊「(スクープショット……!!こんな柔らかいタッチ見たことねぇ…岩村が剛なら春日は柔の選手ってカンジだ…!!)」

小金「なんのっ!!」


しかし小金井がすぐさまシュートを決めた。


観「おおお、誠凛もすぐ返した!!」





黄「おぉ〜っ、思ったより全然くらいついてるっスね」

笠「…てかむしろ今の方がしっくりきてるけどな」



雪乃と火神は攻撃力がズバ抜けてるから即採用したんだろうが、あの二人を加えたチーム編成は春から作った型。

いわばまだ発展途上だ。



笠「日向のアウトサイドシュートと8番(水戸部)のフックシュート。それを軸にしてチームOFで点を取る今の型が、誠凛が一年かけて作ったもう一つの型だろう。去年の敗戦から相当練習してきたんだろ。勝つために。
…あともう一つ分かったのは、こっちの型(チーム)のキーマンはオレがこの前マッチアップしたアイツだ」



黄瀬は不思議そうな表情をする。



黄「?主将(4番)じゃないんスか」

笠「日向は精神的主柱だ。ゲームメイクはPGに任せる。アイツはたぶん眼がもう一つある」

黄「眼…?」



黄瀬はさらに疑問が深まるが、笠松はじっと伊月を見ていた。



伊「一本!!ここ大事にいくぞ!」



誠凛のオフェンス。
伊月は人差し指を立てながらゆっくりとドリブルをつく。
すると伊月の目つきが変わり、伊月の視点はどんどん広がり、上から見る視点へと切り替わった。

伊月は日向にパスを出し、ゴール下へと走りこむ。
ディフェンスの春日も走り出そうとしたが、ちょうどそこには小金井のディフェンスの8番がおり、ぶつかった。



春「ったぁ…!?」

8「いって……!!?」



日向からパスをもらった伊月はそのままシュートを決める。



観「うおぉ決まった!!」

観「すげぇよ誠凛…」

観「王者正邦に負けてねぇ…」

7「クッソ、右サイドで展開していたのに…」

8「右サイドのオレをスクリーン代わりに使いやがった…」

春「(マジかい〜!?今のタイミング…上から全体見えてるぐれーじゃねーと…)」


春日は伊月の先ほどのプレーに驚いていた。





『勝つために』