お茶です

火「オマエら、中学の時…何があったんだよ?」

『………とりあえず練習を長々と抜けるわけにはいきません。歩きながら…話します』









中学二年 初夏―――



ダムッ



黄「あっ…」



帝光中学の体育館では、青峰と黄瀬の1対1が行われていた。
青峰がオフェンスで黄瀬を難なく抜き、あっという間にシュートを決めた。



黄「あーもう!もっかい!もっかいっス!」

青「ははっ、あめーよ黄瀬。つっても始めたばっかでそんだけ動けりゃ大したもんだけどな」



攻守交替をして再び1対1を始める二人を、コート外で桃井と主将が見ていた。



主「黄瀬もよくやるなー。エースの青峰相手に、つか初心者だろ?」

桃「えー才能あると思いますよー?身長もあるしあの吸収力…半年もしたらすっごい選手になるかも…!」

主「…じゃあ青峰もそのセンスを買っていつも相手を…」

桃「え、いや…それは…どうですかね。青峰君はただのバスケバカ…なんで…好きだからやってるだけかも…」

主「なんだよそれー。ガキか!」



主将はため息をつく。



主「…まあそれがアイツがウチでエース張ってる理由がきっと、才能も練習量もチーム一だ…けど一番の理由は

アイツが一番、バスケを好きなんだろうな」



黄瀬と1対1をしている青峰の表情はとても輝いていて、本当に楽しそうにバスケをしていた。



主「まあ、バスケが上手いのはいいけど、その上桃井と幼馴染でしかも雪乃の彼氏ってのはなんかムカつくなー」

桃「腐れ縁ですし、ユキちゃんに関しては同意見です。なんでユキちゃんがアイツを選んだのか…」



桃井はそう言いながら、雪乃の姿を捕らえた。
すると少し困ったように笑う。
雪乃はキツイ練習終わりで疲労のため、コート外で座り込んでいたが、その目線はしっかりと青峰と黄瀬に注がれていた。

一見、1対1を見ている様子にも見えるが、雪乃の目は青峰を追っておりその表情は優し気に微笑んでいた。





『緑間君も黄瀬君も、初めから並外れてたわけじゃありません。『キセキの世代』と呼ばれる彼らも一・二年生の頃は周囲より少し優れた選手、その程度でした。
ただ青峰君が一番早く…そして突然…開花しました(そしてそれから崩れていった…)』









帝光vs陽扇の試合。帝光は陽扇を圧倒的大差で勝っていた。
特に青峰を陽扇の選手たちはだれも止められず、次々と青峰のシュートが決まっていく。



観「すげぇえ青峰!!絶好調だ!!」

観「一人だけぶっちぎってる。あんなの誰も止められねぇよ!!」

緑「(確かに青峰は強い……だが)」

桃「(今日これで50点目……スゴイ!!)」

黄「(というかすごすぎじゃないっスか…?今までとは別人っスよ…!?)」



試合終了のブザーが鳴れば、帝光が173。陽扇が51と120点差近く帝光が離し勝利した。
その大半が青峰の得点である。



その後もトーナメントを勝ち進んでいっても誰にも青峰を止めることができず、帝光が大差をつけて勝利を重ねていく。

青峰の表情からは試合に勝つごとに笑顔が消えていった。





放課後、雪乃と青峰は一緒に帰っていた。



青「ほらよ」



コンビニに寄って雪乃は青峰に奢ってもらったゴリゴリ君を渡された。



『…青峰君、最近練習休むことが増えましたね』

青「あー、いんだよ。練習したら上手くなっちゃうだろ。頑張ったら頑張った分だけ、バスケがつまんなくなってくんだよ」



そういった青峰の表情は冷めきっていた。



青「それにきっと…オレがほしいもんはもう…」





同時刻、黄瀬と緑間も一緒に帰っていた。



黄「最近青峰っちヤバくないっスか?あんなんだとバスケ楽しくてしょーがないスよ!きっと!」

緑「………むしろ逆な気がするのだよ」

黄「は?なんでっスか?」

緑「アイツは誰よりもバスケを好きであるがゆえに誰よりも欲しているものがある。自分と対等に勝負ができる、好敵手(ライバル)だ。
今までもアイツは強かった。…が、まわりと比べて頭一つ程度の話だ。だが今のアイツは強すぎる。ライバルどころか逆にまわりとの差が開いてしまったのだよ。圧倒的に」





『お茶です』