お茶です

青「バスケなんてとどのつまり遊び(ゲーム)だしな。これからは試合もテキトーに流して…」

『それはだめです』

青「んなぁっ〜〜〜〜!!?」



歩道橋を雪乃と青峰は歩いていた時、突然後ろから雪乃は青峰の首元のシャツを引っ張り、アイスを青峰のシャツに入れた。



『私はいつもみんなについていくので精一杯です。正直青峰君の感覚は分かりません…けど、もしどんなに力が離れてても、手加減されたり手を抜かれたりするのは、私が空いてだったら絶対にしてほしくないです』



階段の差があるため、いつもと視線の高さが逆で雪乃が青峰を見下ろすような形になっている。
しかし、いつもと変わらず雪乃はまっすぐに曇りのない瞳で青峰に自分の気持ちを伝えた。
青峰は雪乃の言葉に目を少し見開く。



『それに…青峰君よりすごい人なんてすぐ現れますよ』

青「…っはは」



雪乃の言葉に笑う青峰。
その笑顔はいつも通りの笑顔に戻ったように見えた。



青「そーだな」

『そうです』



二人は試合中と同じように拳をぶつけ合った。



青「ユキ」

『?』



再び階段を降りようとした青峰は、ふと歩みを止め雪乃に振り返る。
そして自分より高い位置にある雪乃の後頭部に手をまわし、引き寄せると軽く口づけを交わした。
突然のことに雪乃は驚き、一瞬体を硬直させたが、頬を赤らめながらもそれに応える。



青「変な感じだな。首が痛ぇ」

『青峰君、ここ外ですよ//』

青「いいじゃねぇか、誰もいねえんだしよ。それにいい加減苗字で呼ぶのやめろよ。付き合ってるんだろ?俺たち」

『……大輝君』

青「…おう!」



青峰は照れ臭そうに返事をした。









後日、帝光対上崎――――



観「きたぁ!今日40点目、やっぱすげぇ」



今日も青峰は次々と得点を重ねていく。
しかし、いつもとは少し雰囲気が違った。



桃「(なんか今日の青峰君、すごいイイ感じで集中してる。相手は今まで何度も苦しんだ中学屈指ののF、井上君なのに圧倒してる…!)」



いつも通り雪乃からのパスが青峰に通る。



青「(…よし!)」



青峰はドリブルをつき、ディフェンスの井上を抜いた。
しかし様子がおかしい。
井上は必死にディフェンスをつこうとしているわけでもなく、ただ突っ立っているだけだった。





青「(…は?)」



井上だけでなく、相手チームの全員が試合をあきらめている様子だった。



緑「(本気の青峰にこの点差…モチベーションを保つのが難しいのは分かる…が)」



スコアは帝光150対上80。もうすぐでダブルスコアになるほど点差が開いていた。



青「(なんだよそれ。もう戦うのも諦めましたってか。ははっ、ちょっとマジメにやったらこれかりよ?相手のやる気も失せちまったら
もうバスケの何が楽しいんだよ)雪乃…」



青峰に名前を呼ばれ、いつも通り拳を合わせるかと思い雪乃は拳を差し出す。



青「オマエの言ったことは間違ってねえと思う。けどやっぱ…ダメだわ。なんか気づいちまった。(どいつもこいつも…ヘボばっかだ。オレとまともに勝負できる奴なんざいねぇ)オレのほしいもんは絶対見つかんねー。

オレに勝てるのは、オレだけだ」



青峰は雪乃と拳を合わせることなく、そして視線も合わせることもなく走り去っていった。









『その夏の全中は青峰君の力で圧勝しました。けどそれから歩かの4人も変わっていって…三年の全中のある出来事をきっかけに…私は帝光バスケ部をやめました』



あまり今まで聞いたことがなかった雪乃の過去を聞いた火神はじっと雪乃を見つめる。



火「…ふーん、まあ一言言わせてもらえば、チョーシのんなボケェ、ってぐれーだわ」




火神の額には青筋が立っていた。



火「強くなりすぎてつまんなくなった?『キセキの世代』そんなんばっかか!…手、出せ」

『え?』

火「いーから、ちげー、パーじゃなくてグーだよ!」



雪乃は言われた通り、おずおずと拳を火神に出す。



火「オレに勝てんのはオレだけ?へそでコーヒーわくぜ」

『お茶です』

火「さくっと勝って、目ェ覚ましてやらぁ」



火神は自分も拳を出すと雪乃の拳と合わせた。

それはまるでかつての青峰と雪乃がやっていたように…。





―――そして、ついに決戦の日がきた―――





『お茶です』完