前座や

桃「ちょっと何やってんの!?今ドコ!?もうすぐ試合始まっちゃうよ!!」

青〈〈何って学校で…あ。あーワリ、寝坊だわ)〉



青峰は特に慌てる様子もなく、欠伸をする。



今「寝坊―――!?青峰!あとどれくらいで来れる!?」

青〈〈あー今吉サン。んー…まあ後半には…たぶん…〉〉

今「頼むぞオイ!!相手はあの誠凛なんやぞっ!」

青((はっはー、またまた。あんなザコ倒すのに20分でも多すぎだって。まー、前半はテキトーにヨロシク))

今「あ?オイ…」



青峰は一方的に電話を切ってしまった。



今「まいったの〜」

桃「あのバカ…すいません…」

今「まあしゃーない。スタートはオレらだけで、ボチボチやるしかないなー」









誠凛控え室―――





リ「…そろそろ時間よ。全員準備はいいわね!?」



試合時間まであと少し、リコの一喝が入る。



リ「大事な初戦よ!!何度も言うけど、I・Hに行けるのは4校中3校!小金井君も前に言ってたけど、一見難しくなさそうにも見えるわ…けど」

小金「んっ…えっ!?何!?」



小金井を水戸部と伊月で小金井の両方の腕を持ち、動けないようにする。



小金「ちょっ、水戸…伊月!?」

リ「なめんなー!!」

小金「へぶっっ」




リコはそのすきに大きなハリセンで小金井の頬を打つ。



リ「リーグ戦だから一敗までは大丈夫…とかそんなこと少しでも考えたらおしまいよ。大事なのは今!この試合よ!『次頑張る』は決意じゃなくて言い訳だからね!そんなんじゃ次もダメよ!!」



誠凛は円陣を組む。



日「絶対勝つぞ!!誠凛――――ファイ!!」

誠「オオ!!!」









会場はたくさんの観客で埋め尽くされていた。
そしてコートには誠凛と桐皇が同時に姿を現す。



観「おお出てきた!!」

観「誠凛と桐皇学園!!」



アップを始める両チームだが、火神は桐皇学園の選手たちの中に青峰の姿がないことに気が付く。



火「あの、青峰は?」

若「あ?」



火神はちょうど近くにいた若松に青峰のことを聞く。



若「遅刻だよ。あの自己中ヤローは」

火「なっ…!?」

『……!?』



若松の言葉に火神だけでなく雪乃も目を見開く。



今「すまんのー、アイツおらんとウチも困るんやけど…後半あたりには来るて。せやからウチらはまあ…前座や。お手柔らかに頼むわ」

小金「(お手柔らかに、とか言われてもな…)」



今吉の言葉に誠凛は拍子抜けをしてしまった。





審「それではこれより、誠凛高校対桐皇学園高校の試合を始めます」



誠凛と桐皇のスタメンがサークルコートに集まる。
火神はジャンパーのため、定位置につこうとする。



伊「火神、もう青峰とは一度顔合わせてるんだって?まさかモチベーション下がったとかないだろうな?」



伊月は懸念を火神にぶつける。



火「…まさか、むしろブチギレてるよ。前座だってんなら挽回できないまで突き放して、世界一マヌケな主役にしてやるよ」

『私も賛成です』



火神の言葉に珍しく雪乃は賛同の意を述べる。



『青峰君は危険です。いないなら今のうちにつけられるだけ点差をつけた方がいい。そもそもいない人にムキになってもイミはありません。目の前の相手が全てです』

日「よし、ちゃんと分かってんな。オレらも当然そのつもりだ。スタートから、全開だ!!」



ボールがティップオフされ、取ったのは今吉だった。



火「っち!!」



今吉はボールをとった瞬間から、自陣のゴールへ一直線に向かう。
桐皇の選手たちも動き出しが早い。



水「……!!」

伊「(速いっ!!)」



しかし今吉の前に日向が立ちはだかる。



日「(今のうちに引き離せるだけ引き離してやる…そのためには…ここを止めて流れを獲る!!)」

今「さすが戻り早いの。しゃーない、ほなら…」



今吉はパスを出す。



日「!」



水戸部は若松により抑えられている。



今「とりあえずまずは、ウチの特攻隊長に切り開いてもらおうか」



パスの先には桜井がいた。



桜「スイマセン!!」



桜井は謝りながらもパスをもらった瞬間にシュートを放り、3Pシュートを決める。



日「うぉっ!!(3P!!つかそれよりモーションがムチャクチャ…早ぇ!!!)」

伊「(9番(桜井)だけじゃない…他の4人も…別に油断してたわけじゃない…けどこいつら…)」

火「(…強ぇ!!)」

日「タチ悪いぜマジ。ウソつくなんて」

今「は?ウソなんてついてへんよ」

リ「……!!」

今「青峰が来たら分かるわ。オレらなんてかわいーもんやでホンマ」



雪乃は静かに桐皇学園の選手たちを見つめている。



今「言うたやろ、前座やて」






『前座や』完