第9話
カタクリside―――
俺は静かにわずかな明かりの方へと歩き出す。
敵は気配で怯えてるのがわかる。
カ「誰かいるのか」
?「……だ、誰ですか?」
カ「(女か)」
明かりの方へ近づきながら問いかけると、すんなりと相手は声を震わせながらも答えた。
その声は甲高く、とても澄んだ女の声だった。
徐々に明かりに近づいていくと俺の身長を優に超す大きな水槽があった。
その中の人影には魚のヒレが微かに動いているのがわかる。
カ「人魚か」
水槽の目の前に来るとようやく水槽の中にいる人物の全体が見えてきた。
その中の人魚を見て俺は固まる。
長い水色の髪。大きな瞳は海と同じ碧色。すっと綺麗に筋が通った鼻。紅色の形の整った唇。
白く傷も一切ないもっちりとした肌。純白の魚のヒレ。
すべてに俺は魅了されてしまった。
今までに多くの女を見てきたが、この俺をここまで魅了した女は初めてだった。
「この女を手に入れてぇ」
自然とそう思った。
?「な、なにがあったんですか?」
震える女の声によりハッと気づき、俺は軽く首を振って正気に戻る。
カ「今、ここの海賊たちと一戦やった。まあこの船の海賊達は全員タヒんだが」
俺の言葉に女は恐怖のまなざしを向ける。
?「私も○されるんですか?」
涙を必死に堪えながら俺にそう問いかける女。
ふとそこで気づいた。
女の首には天竜人が使う爆発する首輪がつけられ、手と魚のヒレは鎖でつながれている。
カ「見る限りお前はここに捕らえられてるようだが、どうなんだ」
?「はい、人間オークションに売られるところでした」
カ「…甲板にママがいる。ママに指示を仰ぐ」
俺は女の手足につながっている鎖を自分の武器である三叉の槍でたたき割った。
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