第21話
歌い終わり、優しくしらほしの前髪を撫でていた手を止めたユキノ。
しらほしはぐっすりと幸せそうに眠っていた。
『すみません、しらほし様…』
しらほしはわずか9歳で母親を目の前で暗殺されたのだ。
ユキノはその時は既にカタクリに嫁いでおり、オトヒメを看取ることができなかったことを今でも後悔している。
きっとまだ母親に甘えたい時期なのだろう。
だからユキノに母の面影を探して、母の命日の近くになると大泣きする。
それは夫であるカタクリには話しており、カタクリも理解をしていた。
『(本当はこのままずっとしらほし様の元にいたいのですが、カタクリさんもいますし…)』
ユキノはもう一度しらほしの前髪を撫でる。
母親のこともそうだが、何者かがしらほしを暗殺しようする者がいるために、しらほしは硬殻塔に軟禁されている。
きっと人一倍寂しさを感じているのだ。
『(いつか、しらほし様を狙う輩を退治してくれる方がいれば、しらほし様はもっと自由に生活できるのに…)』
ユキノはまだ知る由もなかった。
約二年半後、麦わら帽子を被った少年とその一味が、魚人島やしらほしを救い出してくれる未来を。
次の日―――
ユキノはオトヒメのお墓がある海の森へと来ていた。
そこには一つの塔が建っており、そこがオトヒメのお墓だった。
ユキノは塔の前に座り、手を合わせる。
『(オトヒメ様お久しぶりです、ユキノです。1年に1度しか来れなくて申し訳ありません。昨日、しらほし様とお会いしましたが、大きくそしてお綺麗に成長していらっしゃいました。
フカボシ様やリュウボシ様、マンボシ様も逞しく成長しています。次来たときは、しらほし様や私の子供も連れてこれればと思います。子供はまだ予兆もないですが)』
長いお祈りをやめてユキノは顔を上げた。
?「なんじゃ、お主か」
『!』
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