第33話

その日の夜―――



ユキノはカタクリの帰りを待っている。



「帰りは待たなくていい」



と、結婚当初にカタクリに言われたので、いつもは寝てしまう時間。
しかし、今日はプリンに言われたことを実践するために帰りを待っていた。
どこか緊張している面持ちでユキノはベッドに座っていた。

その時、カツンカツンと小さな靴音が聞こえ、部屋の扉が開いた。



カ「なぜ今日は起きている」



未来を視ていたのか、特に驚きもせずにカタクリは部屋に入ってくる。



『おかえりなさい』

カ「あぁ」



カタクリから荷物を受け取るが、ユキノはその場を動けなかった。



カ「『海へ出たいんです』、お前はこう言いたいんだろう」

『…はい』

カ「お前には逃げ出した前科がある」

『…やはりダメですよね』



ユキノが顔を俯かせる。
カタクリはユキノの表情を一瞥するとそっぽを向く。



カ「…俺が共に行くという条件でママに相談してみる」



カタクリが小さな声で言うと、ユキノの顔はみるみる明るくなった。



『ありがとうございます!』

カ「まだ決まったわけじゃない。もう寝るぞ」

『はい!』



二人は背中合わせでベッドに入った。









カタクリside―――



ユキノと結婚して2年。

ママに頼み込んでまでユキノと結婚したが、ユキノとどう接していいか分からない。

今まで兄妹以外の女と接したことはあったが、ほとんどが体のみの関係。

惚れた女はユキノが初めてだった。

思えばユキノの笑顔を見たことがない。

ただユキノの笑顔が見たい。

もう結婚をしているペロス兄に相談した途端、飲んでいた紅茶を噴き出された。



ペ「ぶふっ!!ゲホッゴホッ!カッ、カタクリお前、本気で言っているのか?」

カ「あぁ、どうしたらユキノが笑ってくれると思う」

ペ「2回言わんでいい。どうしたらいいと言われても、私は政略結婚だから気にしたことないが…ペロリン♪」



ペロス兄はキャンディスティックを舐めながら少し考えていた。



ペ「贈り物なんかしたらどうだ?」

カ「贈り物?」

ペ「女は贈り物に弱いらしい。花とか髪飾りとか…」

カ「贈り物か…ありがとう、考えてみる」



そう言って俺はペロス兄の部屋を出た。



ペ「本当に変わったな、カタクリ。あ〜ビックリした」



ペロス兄が一人になった部屋でそう呟き、顔を青ざめさせていたのを俺は知らない。




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