第34話

船上―――



ママから許可をもらい、外出許されたユキノ。
今は船の甲板で風にあたっていた。
潮風が心地よく、久しぶりの海の香りに目一杯空気を吸う。



『はぁ…(やはり落ち着きますね、潮の香りは。泳げたら最高なんですけど…)』

カ「どうだ」



ユキノの後ろからカタクリが現れた。



『とっても落ち着きます。ありがとうございます』

カ「そうか。もうすぐ島へも着く」

『どこへ行くんですか?』

カ「有名な観光地のある島だ。気分転換にはなるだろう」

『何から何まですみません』

カ「…お前は謝ってばかりだな」

『え?』

船員「島が見えたぞー」



最後のカタクリの言葉は小さすぎて聞き取れなかった為、聞き直そうとしたユキノだったが、船員の言葉に遮られてしまった。

船は錨を降ろし、停泊する。



カ「行くぞ」

『ご一緒に?』

カ「当たり前だろう」

『そうですよね、逃げ出さないか見張りが必要ですよね』

カ「(そういう意味で言ったのではないが)はぁ…」



カタクリはペロスペローから言われた贈り物を買うためにユキノと降りようとしたが、言葉が足りずユキノに誤解をさせてしまった。
自分の愚かさにため息をつくが、ユキノにとっては逆効果である。

二人はギクシャクしたまま島へと上陸し、町へと歩き出した。









町へと着くとさすが有名な観光地とあって、賑わっていた。



『すごい人ですね』

カ「迷うなよ」



カタクリは人ごみの中でも、上半身くらい出てしまいとても目立つ。
ユキノも普通の人よりは大きいが、もともと影が薄いため義理の兄妹達はすぐに見失ってしまう。
カタクリは見聞色に優れているため、そんなことはないが。

島の住人たちはカタクリの存在に気付いたのか、カタクリを避けるように歩く。
何しろ、あの四皇のビッグ・マム海賊団のNo.2なのだ。
島の住人たちが恐れるのも無理はない。



カ「(何を贈ればいいのだろう)」



一方カタクリは、ユキノに贈るものを必死に考えているが、なかなかいい物が見つからない。
花でもいいが、生憎カタクリは花には疎い。
考えを巡らせていると、そこで気づいた。





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