第36話
『ありがとうございました』
カ「あぁ。本当に戻ってきたんだな」
『え?』
カ「そのまま逃げるということを考えなかったのか?俺は能力者だ。もしそのままお前に逃げられたら、俺は追えない」
『…もっとあなたといたいと思ったからです』
カ「?」
『こういう時は未来を読まないんですね』
カ「………」
未来を読むことを忘れるほど、カタクリは余裕がないことに気付く。
ユキノは困ったように笑った。
『確かに今日まで、どうやって逃げ出そうとか考えていました。正直、あなたと結婚してからどう貴方と接していいのかわからなかったんです。私は生まれてからずっと魚人島で暮らしていましたし、人間である父親に会ったことありません。
なので人間とあまり接したことがないままあなたと出会い、結婚をして初めて魚人島とは違う島で暮らし始めてとても不安でした」
今までため込んでいた気持ちをユキノはカタクリに話した。
ユキノの言葉にカタクリは静かに耳を傾ける。
『私たち人魚や魚人は昔から人間たちに酷いことをされてきました。そのため、魚人島では人間は怖い、恐ろしい存在だと教えられてきたんです。実際にあなたと出会ったときは、売られそうになったのも事実です。
でも思い出したんです。魚人島でタイヨウの下で人間と共に生活をすることを望んでいる女性がいることを」
ユキノはオトヒメの顔を思い浮かべた。
『その女性は魚人島リュウグウ王国の王妃、オトヒメ様です。私の主でした。オトヒメ様が言っていたんです。私たちは片寄った極一部の人間としか触れていない。私たちは人間のことをまだ何も知らない。そう言っていたんです』
ユキノはカタクリをまっすぐ見つめる。
『最初お会いしたときはあなたは血だらけでしかも海賊。正直恐怖でしかありませんでした。いつ売られるかも分からない。いつ殺されるか分からない。1年前、抜け出そうとした時もそう思っていました。
でも今日街を歩いてみて思いました、いろいろな人間がいるということを。オトヒメ様の言っていた通り、私は人間について何も知らなかった。知ろうとしなかったんだ…と』
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セリフが多くてすみません。