第38話
しばらくして二人は離れた。
カ「…ユキノ、お前に渡したいものがある」
『?』
カ「手を出せ」
ユキノは不思議に思いながらも手を出した。
カタクリはズボンのポケットから細長い箱を取り出し、ユキノの手に置いた。
『これは?』
カ「開けてみろ」
ユキノが箱を開けてみると、そこにはユキノが雑貨屋で見ていたネックレスが入っていた。
ネックレスを見てユキノは目を見開く。
『これ…』
カ「綺麗だと言っていただろ?」
『ありがとうございます。大事にします』
ユキノは顔を綻ばせ、大事そうにネックレスを抱きしめた。
カ「もう一つあるんだが…」
『そんなに頂いては申し訳ないです』
カ「俺が好きでやっていることだ。いらなければ捨てていい」
『そんなことはしません!』
カ「じゃあ左手を出せ」
『左手?』
ユキノは恐る恐る左手を出した。
カタクリはもう一度ポケットから今度は四角い箱を取り出し、箱を開け中身を取り出した。
中身は指輪だった。
カ「雑貨屋の親父から聞いたが、とある国では結婚すると夫婦の証として、指輪を左手の薬指にはめるらしい。そして誓いを立てるらしい。いいか?」
『もちろんです』
ユキノは笑顔を見せた。
カタクリはユキノの笑顔に優しい目で見つめると、ユキノの左手を取り薬指に指輪を通す。
『綺麗…』
ユキノはネックレスと指輪を交互に夕日に照らし、見つめていた。
『あの…夫婦の証ということは二人でつけるんですか?』
カ「あぁ」
カタクリは自分の左手につけている黒い皮手袋を外した。
薬指にはユキノとおそろいの指輪がはまっている。
ユキノは嬉しそうに笑った。
『本当にありがとうございます』
カ「いや、俺はお前の笑顔が見たかっただけだ」
カタクリの顔は夕日と同じくらい赤く染まっていた。
カ「これからも夫婦でいてくれるか?」
ユキノはポカンとしていた。
そしておかしそうに笑った。
『当り前じゃないですか。出なければ指輪を受け取っていないですよ』
カ「それもそうだな。誓おう、俺はお前を一生護ると。この指輪に誓って」
『私も誓います。あなたのことをもっと知り、一生あなたを愛すると』
それから間もなく、二人は仮面夫婦ではなく、オシドリ夫婦と呼ばれるようになった。
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