第44話
10年前―――
ユキノがまだカタクリに嫁いで少し経った頃…
『(どうしましょう…迷いました)』
結婚式を挙げてからずっと部屋から出させてもらう事ができなかったユキノは、今日やっと部屋から出ることを許された。
だがホールケーキ城内だけだが。
一人でホールケーキ城内を探索していたユキノだったが、問題は部屋への帰り道だった。
ホールケーキ城はとても広く、まだ慣れていないユキノは迷ってしまい、同じどころをずっとぐるぐると回っていた。
途中、喋る花瓶や絵画に話しかけ、部屋への帰り道を聞いていくが元々方向音痴なユキノ。
なかなか帰ることが出来ずに困り果てていた。
?「いててっ…」
その時、前から身長の高い男が歩いてくるのが見えた。
その男は紫の髪を3つに分け、下に結っている2つの髪の先には火花が散っている。
その男にユキノは見覚えがあった。
『(あっ…)クラッカーさん?』
ク「あ?」
結婚式の時に紹介されたシャーロット家の10男であるクラッカーだった。
ク「あんたはカタクリ兄貴の嫁の…」
『ユキノです。って怪我したんですか!?』
クラッカーの顔の右半分は包帯がまかれており、包帯には血がにじみ出ていた。
ク「任務でしくじっちまってよ。痛ェのなんの…」
『痛そうですね…』
ク「もともと痛がりで注射も嫌いな俺なのによ…まぁこの傷をつけやがった海賊はぶちころしてやったがな」
クラッカーの言葉にユキノは目を丸くした。
ク「なんだよ」
『…フフッ、いえすみません』
そう言いつつもユキノは口元を手で押さえ、くすくすと笑っていた。
ク「何笑ってやがる」
『すみません、痛いのが嫌いなんてかわいらしいなと思いまして』
ク「男にかわいいとか言うんじゃねぇ」
クラッカーはムスッと不貞腐れた。
『いいえ、誰にでも苦手なことはあります。私も痛いのは嫌いですから』
ユキノがクラッカーにニコリと笑いかけると、クラッカーは顔を赤くした。
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