第58話

鳥の囀りとどこからか聞こえる歌声で毎朝起きる。
カタクリはベッドから起き上がった。

完璧な兄を演じるため、他の兄弟達の前では絶対に横になって寝ている姿は絶対に見せない。
ユキノの前だけだ。

隣でまだ寝ているユキノを見、口元を緩め、頬を撫でる。



カ「(!熱いな。顔も赤いか?)」

『ん…』



ユキノは目を覚まし、トロンとした目でカタクリを見る。
寝起きもあるが、いつもと何か可笑しい事にカタクリは気がついた。



『おはようございます』

カ「あぁ、おはよう。体は怠くないか?咳も出るな」

『少し体がだるく感じます…ケホッ』

カ「待ってろ、医者を呼んでくる」

『すみません』



カタクリはユキノの頭を一撫ですると、医者を呼びに部屋を出て行った。









医「風邪ですね」



カタクリによって連れて来られた医者は、ユキノの触診を終えるとそう告げた。



医「一応お薬を処方しますが、奥様は半人魚でいらっしゃいますので、お薬が効きにくいかもしれません」

カ「そうか」

医「何か飲み込みやすい物を食して頂いて、頭部を冷やし暖かくしていれば、すぐによくなるでしょう」

カ「わかった」

医「それでは私はこれで。お大事にしてください」

『ありがとうございました』



医者は一礼をして部屋を出て行った。
カタクリは医者に言われた通り、用意させた氷嚢をユキノの額に乗せ、厚手の布団を掛ける。





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