第59話

カ「何か食べるか?」

『………』

カ「今医者が言っただろ。食欲がなくても食べなくてはダメだ。薬も飲めんだろ?」

『…タマゴ粥がいいです』

カ「分かった、持ってくる」



カタクリは食堂に行くつもりだろう、部屋を出て行ってしまった。
カタクリがいなくなってしまう事に寂しさを感じ、ユキノは手を伸ばしたが、カタクリは気づかなかった。



『(出来ればそばにいて欲しかったんですが…)』



虚しく空をきった手を布団の中に戻すと、目を閉じた。





ひんやりとした物が額に乗せられる感覚で、ユキノは目が覚めた。



カ「粥を持ってきた。起きれるか?」

『はい』



上半身を起こそうとすると、カタクリは背中に手を添えて手伝ってくれる。
礼を一言言い、粥が入った器を受け取ると、スプーンを使って口に運ぶ。

しかし、その前にカタクリがユキノの手を掴み制した。



『?』

カ「冷まさないと火傷する。冷まさず口に入れて火傷をするお前が見えた」

『あ、すみません』



突然カタクリはユキノからスプーンを奪った。
ユキノが不思議に思っているとカタクリは襟巻きを取り、口元を露わにする。

するとスプーン口元に持っていき、息を粥に吹きかけ粥を冷ますと、スプーンをユキノに差し出す。
それがどういった意味なのかに気づいたユキノは顔をさらに赤らめる。



『自分で食べれます!//』

カ「いいから食べろ」



引く気がないカタクリに最終的に折れたのはユキノ。
恥ずかしがりながらもユキノは、粥を完食した。
もちろん全部カタクリに食べさせてもらいながら。





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