第63話
カタクリの食事。
それは神聖なものとされ、だれも見ることを許されない。
血の繋がった兄弟も、ごく一部の者を除いて見たことがない。
自室でも外出する際も、自身の餅で作り出した社の中に入り、食事をするのが日課。
ただ一人、愛する妻は社に入ることを許される。
『今日はストロベリードーナツですか?』
カ「あぁ、お前も食え」
『はい、いただきます』
時刻は15時を少し過ぎたところ。
いつも通り、シェフが15時ちょうどにカタクリとユキノのメリエンダを持ってきた。
今日は甘い苺チョコレートでコーティングをしたストロベリードーナツのようだった。
『おいしいです!』
カ「あぁ、やはりドーナツはうまいな。特にお前の膝で寝転んで食べるドーナツは」
『まぁ』
カタクリはユキノの膝に頭を乗せ、ドーナツを大きな口で頬張っている。
普段は絶対に口元を襟巻で覆っているが、襟巻も外し惜しげもなくさらしている。
さらにカタクリの伝説として、生まれてから一度も地面に背を付けたことがないと言われている。
しかし今は地面に寝転び、妻の膝でこの上なくリラックスしている状態だった。
それはつまり、愛する妻だからこそ信頼している証でもあった。
それが分かっているユキノはとても嬉しいのだ。
しかし、今の状態になるまではいろいろとあったのだ。
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