好きって言ってよ。


ある日の不二との会話




「啓ってすぐ大好きって言うよねー」

「……。」

「そこんとこどーなの手塚?」




珍しく、悪気なく、そんなこと言い出した。

本当にこの男にしては珍しいことだ。





「……なにが?」

「……なんで軽くキレてんの?」

「別に!?キレてないですけれども!?」

「付き合ってんだし毎日啓に好きって言って貰ってんじゃないの?ってこと」

「―――言って貰ってませんけど何か?」

「えっ」

「……。」

「ノートとか見せてあげたらすぐに大好きって言われたりしない?」

「……前はあったけど今はない。」

「えっ」

「……今はない。全然。」




うるさい気の毒そうな目で見るな。

俺と世田谷にはいろいろあったんだよ仕方ないだろう!?

でもな。でも、それにしても、なんだ、アレだ。





「俺だって言われたい……!!」

「あーはいはい……」

「夏の、最初に告ってくれた時から聞いてない……!!」

「手塚も言ってあげなきゃ言わないんじゃない?」

「それは、」

「九州には黙って行こうとしたし今度はドイツ行っちゃうし」

「ぐぬぬ……っ。」

「手塚が何かあげなくちゃ、啓だってなにも返せないよ?」




『会長だいすき!』





そんな風に言って貰えたのはいつの話だったっけ?

君が最初に俺の事を好きだって言ってくれた時、俺はどんな顔をしたっけ?

君にいつも貰ってばかりで俺からは何もあげてないんだっけ?

真っ直ぐな君が素直に俺に好きだと言うことがないほど、俺との間に機会はなかったんだっけ―――?





「……教室で寝たら風邪引くよ?手塚」

「……わお。」

「周ちゃんが、手塚がいるから迎えに行ってあげてって」

「……あいつもたまにはいいことするんだな。」

「その後の反動が怖いんだけどね」

「世田谷、」





好きって、なかなか言えない言葉。

自分の気持ちを伝えるのなら、なおさら。

俺の言葉はいつも狡くて、だから、君の口からその言葉を遠ざけるのかもしれない。





「……俺のこと好き?」





俺に伝えることを厭うのかもしれない。

先に言えばいいのに、俺も。

世田谷の事が好きだって言えばいいのに。





「……なんか周ちゃんに言われた?」

「……世田谷ってすぐに大好きって言うよな、と。」

「手塚には好きですって言ったじゃん……」

「もっと、」





君の口から言えば。

全部俺の中で、真実になる。

だから、もっと。





「手塚だーい好き。好き」

「……。」

「殺したいほど好き……」

「急にヤンデレになった……!」

「アップルパイより好きー☆」

「対象が軽いな……。」

「ぞうさんが好きです。でも手塚の方がもーっと好きです」

「CM……。」

「手塚はあたしのこと好き?」





俺の口から告げたら、それは君の中で本当になる?





「……好きに決まっている。」

「じゃあこれからはちょくちょく言えばいいの?」

「いや、うーん……?」

「それとも、伝えたくなったら、好きって言っていい?」

「……そうだな。それがいい。」





君はきっとまっすぐで、本当に自分が言いたい時にだけしか言わないだろう。

俺もまた、君に聞かれないとなかなか好きだなんて言えないだろう。

でもそれを、知らないのと知っているのとでは随分違う。

全然違う。





「なんか……お礼みたいなもんだから。気にしないでよそんなに」

「……うん。」

「わーかったよー、手塚んことが一番好きだよ。ほんとほんと」

「なんだかチャラい男の常套句みたいだ。」

「手塚のこと一番好きだから。そんな心配すんなよ、なっ?」

「……。」

「俺のこと信じろよ?てづかぁ」

「チャラ世田谷……。」





見つめ合った瞳に、赤い顔をした俺が映り込んでいる。

大分満足そうな顔をして映っている。




好きって言ってよ。
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
161106


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