ツナグミライ


「わあ、いちごだー」





甘くて酸っぱくて

このくらいの季節になるといつも食べてるから

春が来たって思うよね





「それ食べて早く風邪治せよ、世田谷。」

「うん」





少しずつ陽が長くなって

早咲きの桜が咲いたりして

窓辺の花瓶には菜の花

それだけで春が来たような気がするよね





「……え?雪が降ってる!てづかー」

「本当だな。」

「もう3月なのに……」

「まだ3月だからな。急に寒くなることも多いだろう?」





慌てて飛び出してきたから爪先が冷たくて

一晩中板張りの体育館で震えて過ごした

大きく揺れるたびに怯えて、涙があふれて

あの夜の何と長かったことか

それまでは花の匂いさえしていたような気がしたのに





「今日で震災から―――年です。各地では追悼の催しが行われることになっており」





悲しくて、切なくて

このくらいの時期が来たら思い出しちゃうよね

自分が経験したこと、思い、報道されたこと、後から聞いたこと、見たこと全部ひっくるめて

数を数えるのは簡単

壊れてしまったものを直していく事は、なかなか





「……風邪、ぶり返すから。世田谷。」

「うん……」

「いつまでたっても消えないよ。たぶん。」

「……うん」

「でもそれが復興に繋がるなら、覚えていられることは覚えておきたい。俺は。」

「……」

「忘れられないことはきっと、ずっと忘れられない。」




傷付いたものを元に戻すのは、……。

甘酸っぱいいちごの季節

綻ぶ花の香りの季節

失くしてしまった大事なものの季節

忘れないよ。

ここにあったものも。

ここであったことも。

忘れない。

体に染みついて、ずっと、覚えていく。

季節をひとつ重ねるように、当たり前のように思い出して、覚えていく。





ツナグミライ(Can’t forget 20110311)
何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング
170312


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